これは、アメリカでキリスト教の布教のゆえに開鎖された最初の教会であるともいわれるが、「アメリカはキリスト教国である」と、専門家やジャーナリズムによって教えられている日本人にとっては、とてものことではないが、耳になじまないニュースだろう。けれども、シルプェン牧師がこの事件直後の一九八三年に公刊した著作によれば、このころまでに、アメリカでは六千件のキリスト教徒に対する(キリスト教徒としての活動をしたがゆえの)法的訴追がなされていると記されている。さらに同牧師は、もはやアメリカ政府は、キリスト教の神によって叙任されてはおらず、むしろ悪魔的な政府に変質してしまった。アメリカ人は神のもとで生きることを欲しなくなっていると述べている。
また、「我々はおそらく、アメリカを救済できない。アメリカは(神から)あまりにも遠くへ去ってしまった。アメリカは根本的には、その政府、その学校、企業、メディア、生活のすべての領域から神を追放してしまった。アメリカでは教会のなかでさえ、人々は死んだ木にすぎない。わが国は神を廃棄処分にしてしまったのだ」とも書いている。
アメリカ社会の主流を支配する空気は、ヒューマニズムという宗教であるとシルヴュン牧師は認識している。しかし、アメリカの教育の「ヒューマニズム化」(という名の脱キリスト教化)は、二十世紀初
頭にロックフェラー財閥の設立した一般教育評議会に発しているものであり、ここで大きな役割を果たしたジョン・デューイは、一九一九年から二○年にかけてネプラスカ州に在任し、以後、ネプラスカ州政府の教育機関は、学校教育からのキリスト教色排除にことのほか熱心であったことを忘れてはなるまい。