28 カトリックの荒廃を進めた第ニバチカン公会議の効果

フランスでは、第ニパチカン公会議以後の十年の間に、カトリック教会の荒廃と全面的自壊が進行したという。たとえば、ある女子修道院では、シスターが小さな子供たちにキリスト教の教理を教えるときに、「ホスチアという白いパンのなかにイエスさまがほんとうにいらっしやいます」(カトリック

では大昔からずっとこのように教えてきた)などと言ってはいけません。小さい子供たちは、ほんとうにイエスさまがそこにいらっしやるという間違ったことを考えますから」と指導していたとシスターたちが反対すると、驚いたことにそこの修道院長は、院長としての権限をもって「これからは、イエスがホスチアに現存するなんて、間違った古い教えをしてはなりません」と押し切ったというのだ。

カトリックの信者ではない大方の日本人には、この実話の衝撃のほどがよくは理解できないであろう。しかし、それにしてもこれは、カトリックとしては白いものが黒くなるほどの百八十度もの変化(いや、そんな程度ではなくて、カトリック教会の依って立つ秘蹟、サクラメントそのものの完全な否定と放棄)としかみえない。だが、それにしてもこの修道院長の「間違った古い教え方」というせりふはどうしたことか。これは、修道院長の個人の見方などではありえない。実はこれは、ローマ法王庁の項点から降りてきている厳重な(異論を許さない)指導なのだ。そしてこの指導は、第ニバチカン公会議の正式の決定から出てきているのである。カトリックでは公会議の決定は、法王の権威と権限より優越するとされているのだから、カトリック内部では、なんぴとたりとも、それに従わないわけにいかないのだ。

多くの日本人には信じられないことだが、第ニバチカン公会議はさらに、聖母マリア信仰の事実上の禁止(カトリックからの追放)をも決定している(『教会憲章』第八章「キリストと教会の秘義との中における神の母、処女聖マリアについて」)。フランスでは、ある主任司祭は子供たちの初聖体の祝日に、ロザリオを渡すように子供たちに命じ、そして祭壇の前にロザリオを積み重ね、みなの前で燃やしてしまったという。

「ロザリオ」とは、聖母マリア信仰のためには不可欠な用具の一つで、仏教で使う数珠のようなものである。聖母マリアにとりなしを願う祈りを「ロザリオの祈り」というほどに大事にされてきているものを、焼失させてしまったのである。こうしたことから、アメリカのカトリック教会では、第ニバチカン公会議以後の二十年余の間に、十二万五千人の修道女と五万人の神父が俗人に還った。これらの修道女の平均年齢は六十四歳であったという。なかでもポストン教区では、一九五八年に七十二人の司祭が叙任されたのに、一九八九年にはわずか三人になってしまった。全世界で(もちろん日本でも)、カトリック教会の自壊が起きているようだ。