27 仮面を脱いだ意外な大物アンジエロの素顔

アンジェロ・ロンカッリという人物は、その八十二年の生涯をつくづくと眺めてみると、意外にもたいへんな「大物」であったのではないか、と思えてくる。

少なくとも、十六世紀にイエズス会を創設した、あのイグナティウス・ド・ロョラに匹敵する大役をやってのけた「千両役者」であったらしいのだ。アンジェロがピウス十二世のあとを襲って、コンクラーべで次期法王に選挙されたとき、彼はョハネスニ十三世という称号を選択した。ところが、なんと不思議なことに、「ヨハネスニ十三世」はすでに一人いるのである。一四一○年に第二百七代ローマ法王ヨハネスニ十三世が出ている(!)、しかも、この最初のヨハネスニ十三世は、コンクラーベで選挙されておらず、また、一四一五年に罷免されている人物なのだ。

さらに、この奇怪な法王については、彼の義妹を含む二百人以上の女性を誘惑したという史実が残されているという。いったい、よりによって、どうしてこのような因縁のある名をアンジェロは選んだのであろうか。当時のローマ法王の座は、いかにも紛糾しているようだ。ヨハネスニ十三世(在位一四一○〜一五年)のあと、法王の座は二年間空位となる。ほか、一四一七年にマルチヌス五世が出、次いで三一年にエウゲニウス四世に代わるが、その間二三年にクレノンス八世が、また二五年にベネディクッス十四世が別に法王を自称している。アンジェロはトルコ時代(一九三四年、トルコおよぴギリシア駐在法王使節に任命される)に、闇
のなかの主人たちのお眼鏡にかない、未来の法王候補として選ぴ出され、秘密結社「薔薇十字会」に入会を許されたもののようだ。「薔薇十字会」は、フリーメーソンの高級位階に位置づけられ、フリーメーソンのなかで宗教部門を担当し、指導する機関とみなされている。闇のなかの主人たちは、それではアンジェロにどのような役を振ったのだろうか。

アンジェロは左翼であり、社会主義的ヒューマニストとして育成された。したがって、アンジェロのヨハネスニ十三世は、ピウス九世や同十世以来のバチカンの反共主義を解消し、世俗化を完結させ、最終的にバチカンをしてユダヤの軍門に屈伏せしむるべく、黒幕の主人たちによって命令されていたのではなかろうか。そして、ついに法王の座についたとき、彼は仮面を脱ぎ、イエス・キリストの教会をイエスを殺害したユダヤに売り渡したのではないか。