25  ユダヤにバチカンを売ったベア枢機卿

第ニパチカン公会議で、主としてユダヤ問題についての宣言を担当したベア枢機卿は、どうやら、バチカンをユダヤに売り渡すにあたって、はなはだ重要な役割を果たした人物のようだ。

日本人には、カトリック関係のごく持別な専門家を別として、この人物の名はまったく知られていないのではなかろうか。ベアはこのとき、イエズス会総長(「影のローマ法王」とされるほどにバチカンの事実上の主人であり、実際の法王よりも強いといわれる)の地位にあり、このイエズス会首脳部が、秘密裡にプナイプリス(フリーメーソン内のユダヤ人全員のみでつくられた組織で、フリーメーソンの上位機関と称される)と交渉し、第ニパチカン公会議のユダヤ問題決議案を作成したのみならず、国会議全体を演出したとされているのだ。さらに驚くべき事実を我々は知らされる。カトリックの中枢にすわる、このベアは、なんと、ユダヤ人であったというのだ。

ペアという姓は、ドイッとオーストリア在住のスファラディ・ユダヤ系のベジャベハに由来する。つまり、一九六○年の時点で、パチカンの主は、まぎれもないユダヤ人であったことに、我々は気づかされるのである。第ニパチカン公会議の直後、世界最大級の発行部数を有していたアメリカの雑誌「ルック」は、一九六六年一月二十五日、ベア枢機卿といくつかの世界ユダヤ人組織が、同会議で果たした役割を詳網に解明する記事を発表したというのだが、当時の日本人はおそらく誰一人として、その世界史的重要性に目をとめなかったのではないか。しかも、この問題の記事は、「ユダヤはどのようにカトリックの思考を変革したか」という、率直といえば率直だが、また、見方によっては、たいへん挑戦的なクイトルをつけられていた。

つまり、アメリカ・ユダヤ人委員会(アメリカン・ジューイッシュ・コミッティ)、プナイプリスのユダヤ名誉毀損防止連盟(ADL=アンチ・ディファメーション・リーグ)などが前面に出て、ユダヤ当局がカトリックの教義の検閲官となることを認めさせてしまったというのである。キリスト教会の歴史をいくらかでも知る者にとっては、これは驚天動地の恐るべき異変といわなければならない。プナイプリスは、カトリック側に対して、反セミティズムと受けとれるすべての言葉を、教会の儀式から除去することを要求したともいわれる。主客転倒などという言葉ではとても表現できない。バチカンがユダヤ教徒の召使いか奴隷になってしまったのではなかろうか。