そして、マルクスとともにこの事務局を動かしていた人物は、マッチー二の秘書をしていたヴォルフ(ポーランド系ユダヤ人)、ル・ルベー(フランス・フリーメーソンの会員)、クレーマー(イギリス・フリーメーソンの幹部)といったぐあいである。つまり、この共産主義インターナショナルの真の主人は、当時のフリーメーソンの首脳であるパイクとマッチーニだったのだ。
いや、もっと正確にいえば、マルクス共産主義の父はフリーメーソンであったということになる。さらに、狡滑にもメーソンは、同時にキリスト教徒の反共産主義運動をも組織して、キリスト教徒が共産党の背後にいる真の敵、フリーメーソンに気づかないように操作する。アルベルト・リベラ(スペインの元イエズス会士)は、イエズス会総長が実はスペイン共産党員であり、またフリーメーソン会員でもあることを知るのだが(前述)、ものごとの皮相な現象に幻惑される人は、こんな話を聞かされると、すべて小説的世界のできごとと片づけてしまうかもしれない。裏のまた裏が、そしてまたその裏がというふうな話の展開に、意識がついていけなくなるかもしれない。しかし、それは真実であり、幻惑させられることは、影に潜むものに操られていることだ。
「フリーメーソンの全機構は、組織された虚偽である」という。しかし、いったい、なんのためにこの人々は、このように執念深く、異様な精力を費やして嘘をつくのだろう。彼らは嘘をつき
通して、何を獲得しようとしているのだろうか。いみじくも、あのソルジェニーツィン(『収容所列島』の作者)は、ソ連共産党政権の本質・実体は、虚偽である、嘘をつくことであると見破った。何が嘘かといえぱ、共産覚(フリーメーソンの道其の一つなのだが)は人民の代表であるといいながら、実は人民の敵であったことだ。彼らはあるがままの自分を、その正反対のものに見せかけねぱならないのだ。