6 カトリック教会解体のために仕掛けられた三つの陰謀

「ルネサンス以後ヨーロッパは堕落した、ルネサンス以前が本来のョーロッパである」と、来日に際してオットー大会(ハプスプルグ家当主、EC議員)が語っている(一九九一年)。オットー大公のこの警句は、明治初年以来、我々日本人に与えられているョーロッパ史の常識と正反対だ。

人権が抑圧されていた暗黒の時代、そしてルネサンスは、その暗闇に光を照らす人間解放の輝かしい偉業、といった説明を与えられている。ルーテルの「宗教改革」もまた、救いようのないバチカンの腐敗と圧政に、敢然と反旗をひるがえした正義の事業であって、それによって『聖書』は、教会当局の独占物から全信徒の手に戻った、というふうに我々は教えられている。

また、それを確立させたのは「フランス革命」であったとされている。ルネサンス(十四ー五世紀)、宗教改革(十六−七世紀)、フランス革命(十八世紀)という、この三つの大事件が、実は、ユダヤによってカトリック教会解体のために入念に仕組まれた謀略であったといえば驚かれるだろうか。イエズス会の秘密は、この説を取り入れるとき、初めて明るみに出てくるのではなかろうか。イグナティウス・ド・ロョラは、スペインのバスク地方の出身と伝えられるが、我々には詳しいことはわからない。しかし、ロョラのあとの第二代のイエズス会総長は、ユダヤ系の人物(キリスト教に改宗したユダヤ人)と聞いている。つまり、イエズス会の誕生には、当初からユダヤの影がはなはだしく濃いのだ。これは奇妙なことで、とうてい尋常一様な知識では丁解できない。
 
 

この謎は、ずっと下って現代、第二次世界大戦後まで糸をたぐってきて、初めて氷解するものであろう。フランス国籍のユダヤ人学者ジュール・アイザックは、戦後、ヒトラーのユダヤ人迫害の根源が、キリスト教の教義そのものにあるとして『イエズスとイスラエル』『アンチ・セミティズムの源泉』という二冊の著作を公刊した。そのなかで、キリスト教の核心中の核心というべき「福音書」そのものをまな板の上にのせ、それを不当で誤った反ユダヤ主義文書として切って捨てた。そしてなんと、このアイザック教授の説に賛同するカトリックの輪が大きくなり、ついに、イエズス会のトッブの地位にあるベア枢機卿が推進者となって、第ニバチカン公会議(一九六二ー五年)では、アイザック説が大幅に取り入れられたというのだ。