4 イエズス会を動かすオカルト神秘主義

ロヨラは、時のローマ法王パウルス(パウロ)三世(在位一五三四〜四九年)に、「神がロヨラの心を光で照らし(イルミネイテッド)母なる教会を守るべき同盟組織を建設するよう命じた」と信じさせたといわれている。

そこで、法王はロョラの「不可侵」を宣言し、また、ロョラにある種の白紙委任状を与えたという。イエズス会は、ロヨラのこの「神秘体験」に土台を置いている。そして、ロョラには『霊的実体験』という著作がある。つまり、イエズス会のその後のおそるべき〃力〃の根源は、なんとオカルト神秘主義に発しているのだ。このロヨラの「エクササイズ」の核心は、「自分のイマジネーションの主人となる」ということである。イエズス会は、入会した修道士たちに対して、ロョラの著作やロョラの開発した方法によって精神的(オカルト的)訓練を与える。こうしたことに、我々はふと、類似の事象に想いを寄せることになる。そう、いわゆる「成功哲学」である。いま、盛んにアメリカから日本に押し寄せてきている「自己開発トレーニング」「能力開発テクニック」「マインド・コントロール」などなどをあなたは想起しないだろうか?実際に両者は酷似している。

想像するに前者(ロョラ)はむしろ、後者の本家本元なのではなかろうか。ナポレオン・ヒルという作家のこの種の本では、「自分は成功する…」「自分は金持ちになる」とひたすら思い込むと、必ずその思考が現実になる、と保証されている。世に有名であった「アメリカン・ドリーム」の実体は、実はこのあたりにあったのかもしれない。それにしても、こんなスタイルは、イエスの教え(福音書)に照応するものだろうか。ロョラという人物の出現とその背景には、なにか得体の知れない不審なものを感じないわけにはいかない。つまり、ロョラはまず、マインド・コントロール=洗脳を武器として法王に働きかける。次にイエズス会士の全人格を改造する。

・…このようにして力を得たのではなかろうか。ついには、イエズス会をロョラ、あるいはイエズス会本部の意のままに動く精密な機械に仕立てあげたのであろう。そのとき法王はもはや、イエズス会の力を無視しえない。一度、ロョラによってつくられたこのシステムが動きだすと、それは自動的に増殖し、級数的なテンポで、ローマのイエズス会本部の権力を強化することになったのではなかろうか。