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湾岸戦争終結後の「戦争批判」

湾岸戦争が終わり、マスコミは今ごろになって突然、戦争批判の投書を載せ始めた。反対・批判の声は、それ以前にもたくさんあったのに、である。すでに、戦争はごめんだ、そんな資金があるのか、アラブのいざこざはアラブ人どうしで話し合えばよいではないが、なぜアメリカ兵が参戦しなければならないのか…などの声はアメリカ国内にたくさんあった。なぜそれを戦争前や戦争中に公平に出さなかったのだろうが。なぜ終わってから急にたくさん出すのか。マスコミにしても少しは良心の呵責があったのかもしれないが、今になって出す一番の理由は、こういう批判を国民が読んでも、戦争後なら反対運動を起こそうと思っても後の祭りだということである。

そして、「報道は公平ですよ」というアリバイをつくるためでもあるだろう。いったいどれだけの人の命が、この愚かな戦争のために失われたのだろう。イラクの兵隊だけでも五、六万人。そのうえ、フセインが独裁者だということだけで、何十万人もの非戦闘員である一般のイラク国民が死んだ。そして今もなお、流浪の難民となったクルド族が毎日二千人も死んでいく。

あるアメリカの識者は、ブッシュ大統領が「神の名において」戦争の勝利に感謝したことを、ひどく怒っていた。「神の名において」戦争を始め、「神の名において」たくさんの罪もない人を殺し、この罪を「神の名において」正当化しようとするのは許せない、というのである。まさに神への冒涜であることは疑いもない。また別の人は、フセインが有罪ならプッシュも人殺しの罪で有罪だと主張している。もしアメリカのマスコミがイスラエルに偏向せず、公明正大の道を守り、政府の政策も真の民主主義を守っていたならば、このような悲劇は避けられたはずである。

しかし、こういう偏ったアメリカの傾向を批判した記事は、私のものも含めて、まったくと言ってよいほど活宇にはならなかったのである。今ごろになって戦争は問違っていた、などという意見を発表している人々は、戦争中には問違いに気づかなかったとでもいうのだろうか?終わってしまってから戦争はすべきでなかったという意見を活字にしたところで何になるというのだろう。「ペンは剣より強し」と言うが、ペンで書かれたものを「出版しない」ことにより、剣や暴力が先勝してしまう体制がアメリカに存在し、黙認されている。自分たちに都合の悪い、批判的な意見は、ボッにしてしまえば面倒がないのである。これがアメリカのマスコミ界に起きている現実であり、アメリカのマスコミ政策の実態であり、
 

アメリカ民主主義の実像である。ユダヤ系の分裂の項でもちょっと触れたが、現在アメリカのユダヤ系は一般人はもちろん、組織的にも分裂しつつある。JC○ME(ジュウイッシュ・コミュニティ・オン・ミドル。イースト)という組織がある。一四○名以上の大学教授、弁護士、政治家など専門職についているユダヤ系の人々が中心となって組織していて、大きな発言力を持っている。このJC0MEが最近、なんとイスラエルのシャミール首相に対して「現行のイスラエル政策・方針を改めないのならば、我々JCOMEはアメリカ政府に働きかけて、今後イスラエルに援助金を送らないようにする」と通告したのである。

この組織の代表者には、創始者でもある工−ル大学法学部名誉教授チャールズ・ブラック博士を始めとして、多数の著名な大学教授が名を連ねている。現在会長をしているマークープルゾンスキー氏はワシントン代表として、ワールドージュウイッシュ・コングレス(世界ユダヤ会議)の要職にあった人で、彼によればJC○MEは現在三

干人以上の会員を持ち、主としてイスラエル政策を批判する組織であるという。パンフレットを見ると、これが同じユダヤ系がと恩うほどの内容が書かれている。プルゾンスキー氏から、日本語訳して会表してもよいという許可を得たので、以下に邦訳を掲げておく。

「すべてのアメリカ人たちで、平和と正義を中近東において見たいと望む人々は、我々の組織に加入してほしい。我々は戦争を始めて、これがクウェートのためであり、その合法的支配を取り戻してやるのが目的であると間かされた。にもかかわらずアメリカは、単に独立を望んでいるバレスチナ人民の土地を、イスラエルが占拠していることを支持・援助しているのは一体どうしたことか?我々は戦争を始めて、これが国連安保委の決議案を施行するためだと聞かされた。にもかかわらずアメリカは、同類の国連決議案をイスラエルが回避することを援助しているのは、いったいどうしたことか?我々は戦争を始めて、新しい世界秩序をもたらすためだと聞かされた。にもかかわらずアメリカは、相変わらず旧式な、前世紀的・植民地主義的な手順を、実現実行しようとしているのはいったいどうしたことか?」

彼らはアメリカ系ユダヤ人であり、アメリカー般市民よりもアメリカ的で、真の平和を中近東全民族にもたらすよう望んでいる。こういうユダヤ系が組織として出てきたのは喜ばしいことだと思う。
ついでに、JC○ME代表者に名を連ねている中の一人、MIT大学のノーム・チョムスキー教授について述べておこうと思う。この人はユダヤ系批判者としてよく知られている。教授は、「アシユケナジー・ユダヤ系が血縁上ユダヤ系ではなく、カザール民族だという事実が明らかになったことを認める」と宣言し、他のユダヤ系の人々にも認識するよう勧めている。そのほか、同傾向のアメリカのユダヤ系知識人の代表例としては、アルフレッドリリアンソール博士をあげることができる。博士の著書『ザ・ザイオニスト・コネクション』(邦訳『ユダヤtコネクション』宇野正美訳・三交社刊)には、ユダヤ系やプロ・イスラエル系の、アメリカや世界情勢に対する長期にわたる支配実例や、アメリカのマスコミの偏向報道の実例が詳述されている。