9 ノーペル平和賞は誰が与える

ノーペル平和賞はオルクラ社の山荘で会談を成功させたひとり、ノルウェー外相ヨハン・ホルストが有力候補と目され、すでに平和賞候補に指名されながら、九四年一月に急死してしまった。ノーベル平和賞を誰が授与するかを知っておく必要があるが、ロスチャイルドー族のカール・ハンブロ−がノーペル平和賞の委員であった。

しかもハンブロ−家は、スウェーデンの産業の五○%を支配するプァーレンペリ・ファミリーと同じ系図に入るのである。ここまでの物語をまとめると、このようになる。スカンジナビァ半島の広大な利権を掌中におさめるユダヤ人のヴァーレンベリー族は、自動車のプォルヴォや重工業界で世界一のァセァ・ブラウン・ポプェリ社を支配してきたが、代々ノーベル賞を与えるノーベル財団の理事をつとめてきた。

そして前述のように、第二次世界大戦中にョーロッバのユダヤ人を救済したスウェーデンの外交官ラウル・ヴァーレンベリが、イスラエルの英雄として記憶されてきたユダヤ人である。彼は、ソ連に抑留されて行方不明のままであり、現在もシベリアの収容所に生きているという疑いが晴れない。このような一族の手になる世界で、もし九三年の中東和平の功労者にノーベル平和賞を授与することになれば不思議な経過に感じられるが、それは不思議でも何でもないことである。それが、ロスチャイルド財閥というものだからである。間題はこのような儀式でなく、バレスチナ人がまともな生活をできるかどうかにある。

ユダヤ金融財閥ロスチャイルドの掌中で事がおこなわれてきただけに、ァラプ人が不利になることは目に見えている。ヘブロンの虐殺があって、このまま順調に進むかどうか、きわめて疑わしい。イスラエルが不法に占領している広大な地域のうち、ゴラン高原やガザなどでは、身勝手な論理を
 

狂気のように叫んでユダヤ人がバレスチナ人に襲いかかる光景が、日常のように繰り返され、それをイスラェルの国家が黙認してきた。しかもパレスチナ難民の帰還を、イスラェルはほとんど認めていないのである。アラブ人が住んでいた聖都エルサレムも、ユダヤ人は絶対に返還しないと言っているのだ。こうした、どこを見ても不条理の横行するユダヤ人世界が目の前にあるとき、バレスチナ人が身を守るために立ちあがれば、全世界がそれを「イスラム原理主義者」と報道するのは、一体どうしてなのか。

こうした殺人を「中東和平」と呼ぶのであろうか。確かに、社会学的には、和平合意による経済発展が進めば、いずれ何年かのちには中東に平和がやってくる可能性はある。しかしパレスチナ人は、社会学をやるために生きているのではない。毎日、子供を含めて家族が殺されてゆく経過が社会学だというのであれば、そのょうな状態は、いま子供が生きているあいだに全面的に否定しなければならないものである。和平合意の動機は何であったのだろう。

イスラェルが和平に動いた理由として、さまざまなきっかけや原因はあるが、最大の問題は、イスラェル経済が追いつめられていたからである。イスラェルという国家は、観光と軍需産業とダイヤで成り立ってきた。このうち観光と軍需産業が、巨額の損害を記録していた。パレスチナ全土に広がる聖地観光は、聖書にあるガリラヤ、ナザレ、ベッレヘム、ェルサレム、死海などで世界的なものだったが、特に湾岸戦争後に再び高まったアラプの低抗運動〃インティファーダ〃の影響で、アメリカ・ヨーロッパからの観光客が紛争に巻きこまれることをおそれて、巡礼に来なくなっていた。軍需産業も、東西冷戦の終結によって世界じゆうの死の商人が不況で崩壊しつつあり、イスラェルも例外ではなかった。もし、イスラェル経済が破綻すれば、ユダヤ
財閥ロスチャイルド家も大きな打撃を受ける。

それを避けるためには、和平に動かざるを得なかったのである。逆に言えば、和平が達成されれば、莫大な利権が中東に生まれることになる。クリントン政権は、和平調印後に〃イスラエルへの経済支援に反対する者〃を異端者として切り捨てられるようになったので、ホワイトハウスにかかえる大量のロスチャイルド人脈が、公式に動き出した。戦闘機の輸出、次々と打ち出される経済援助、などであった。パレスチナでは、地価が高騰してきた。

考えてみれば、石油王国のアラブ世界と、金融王国のユダヤ世界が、まともに手を組めば、この地球上でこれほど強い連合はないはずである。しかもアラブの産油国では、アメリカ・ョーロッパの石油資本がアラブ王室を支配して、ほとんど自在に動せるようになっている。そこに起こったのが、ヘブロンの虐殺である。自ら招いたこの事件で、判断を誤れば、おそらく想像以上に深刻な出来事が起こるだろう。バレスチナ人、ョーロッバ人、黒人、そして全世界が、ィスラエルに対して感情的に許せないものを見たからである。