清潔を好む事

 日本人の潔癖性はよく知られている。日露戦争で日本人が巧みに蒙古人に変装して敵地に潜入
したが木賃宿に泊って毎朝歯を磨き顔を洗ったので日本人と怪しまれ、遂に捕縛されたという。
ユダヤ人も非常に潔癖な民族で、神殿に参詣に赴くときには必ず入浴しあるいは行水をするの
を常としている。祭司神職は日々儀式を行う前に入浴すべきとの規定がある。一般の風習として
毎朝顔を洗わぬ前には食事をせず人にも合わず、またそのまま外出もしない。朝、洗面を終り服
装を整えて後、神に礼拝の勤めを行って朝食につくことは日本古来の習慣と異ならない。家屋の
内外を清潔にすることもよく行われ、ことに正月を迎える準備として十二月末に大掃除が行われ、
神殿にあっても大除の式が行われ、日本と非常によく似ている。

また祭日の前日には各家で大掃除を行うこともわが国の風俗と同じであり、現に東京の日枝神社
の祭、および大阪の生国魂神社の祭などには、その前日各町家が大掃除を行い、道路を清め、
  祭日には仕事を休んで敬意を表わすのである。
    ユダヤでは神殿の参詣に赴く前に身を清めるため設けられた共同の水浴場または温浴場があっ
   てその浴場をミクヴァ−といい、常に百二十ガロンの水を浴槽に貯める規定である。日本の至る
   所の町に多くの浴場があることの由来は古いといえるのである。

この宗教に基づく由緒を知らず
   日本には温泉が多く湧き出るために入浴が盛んであるとするのはこじつけにすぎないのである。
   ユダヤ人はトイレの後は必ず手を洗い、食事の前後にも洗う。神殿の前には手洗盤があって、参
   拝者は必ず手を洗う。また婦人がその頭髪を乱したままなのは固く戒律で禁じられており、早朝
   理髪前には手拭に似た布で頭髪を覆う風習がある。わが国でも明治維新前まで婦人が頭髪を乱し
   ているのを、身だしなみのない者として戒め、髪を正しく結い毛髪が乱れないよう充分気をくば
    ったものである。
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