正月行事

 

 

ユダヤの正月行事の起源はすこぶる古く、紀元前千四百九十一年ユダヤ人がエジプトを出たと
きに発している。ユダヤ人のヨセフがエジプトの宰相となったので、同族を残らずエジプトに移
住させたが四百三十年ののち人種の対立が起った。そのとき、偉人モーセ現われ、百数十万の

同胞民族を率いてエジプトを脱出し、祖先の故郷であるカナンに向って進んだのである。その四
十年にわたる苦難に満ちた放浪時代を記念するために行われる行事なのである。出エジプト記十
二章に「エホバ、エジプトの国にてモーセに告げていいたまいけるは、この月を汝等の月のはじ
めとなせ。汝等これを年の正月となすべし」 とある。
                      
 この月の七日まで酵を入れないパン即ち餅を食べ、かつその時代に嘗めた辛酸を忘れぬため、
苦菜をそえて食べることについて同章に「その肉を焼きて食い、また酵入れぬパンに苦菜をそえ
て食うべし」とある。これは実に日本の風習と驚くほど一致している。若菜は即ちなますある
いは七草の中の一、二の菜に相当する。
 出エジプト記四十章に「ここにエホバ、モーセに告げてのたまわせけるは、正月の元日に汝集
会の幕屋を建つべし。そして汝その中に律法の箱を置き、幕をもてそれをへだて隠し、また台
を携え入り供えの物を供え」とある。酵を入れないパン、つまり餅を供えるのである。平常は発
酵物を入れて作るパンも、正月にはこれを入れないで作るので、日本の餅に似たものである。
民数記十一章に、「民ゆき巡りてこれを集め、石臼にて挽き、あるいは臼でひきてこれを釜の
中で煮て餅となせリ」とあリ、これは米を臼で掃き餅としたことは明らかである。出エジプト記
三十四章に「汝酵入れぬパンのしきたりを守るべし。即ち我汝に命ぜし如く、正月のその期に及
びて七日の間これを食うべし」とある。これはわが国で正月の元日より七日問、即ち七草まで餅
を食べる故実と符合する。 -----------------------------7d56d1380482 Content-Disposition: form-data; name="userfile"; filename="" Content-Type: application/octet-stream