赤糸(えにし)と宮参り

                                                                                                                             
 昔から日本で緑があること、あるいはゆかりがあることをえにしという。しかし誰もこの由来
を知るものがない。
上古ユダヤでは香柏、即ち檜の妓と、ヒソプという榊
のようなものと、赤い糸とは神に緑ある
ものとして神職が清めの式に用いていた。レピ記十四章に「彼即ちその家を潔むる為に鳥二羽に
香柏とヒソプと赤き糸を取り、祭司は鳥の血と活ける水と活ける鳥と香柏とヒソプと赤き糸をも
し家を清め」とある。
赤い糸はまた祝いなどに用いられ、神にゆかりのあるものとされていた。創世記二十八章に
「産の時にいたりて見るに、その胎に双児あり。その産むとき手出でしかば、産婆はこれ
 にいづといいて赤き糸をとりてその手にしばりしが、手を引こむるにあたりて兄弟いでその兄
に赤糸のある者後にいづ。その名はゼラとよばる」とある。赤い糸の起りは、後にユダ別派
 となったこの兄弟から来ているものといえる。

 上古のユダヤ人もその後のユダヤ人も、男児の生後三十一日目に神に対する感謝の式を行う。
そのときには父母が盛装した小児を連れて神殿に詣り、その父より謝恩の礼金として身分に相当
する銀貨数杖を紙に包んで神に献げ、これらの金は祭司により後日慈善費に使用される。女児に
ついても宮詣リの儀式を行い、多くは誕生日の次の安息日 〔土曜日) に神殿に詣リ、出生のこと
とへブル名を報告して感謝の式を行う。古来日本でも男児は生後三十一日目に、女児はこれより
も早く、その父母または母親と乳母に伴われて産土の神社へ参詣し、これを宮詣りといい、その
帰途親戚知人を訪問してその健全な肥立ちを告げ、祝いの品を贈られるなどの風習がある。

ユダヤ人の男児が十三歳に達したときは、宗教上の責任を持つことになるため、そのときに十
三詣りの儀式があリ、このときからこの男子は「戒律を受けた者」という称号を得る。一人前の
男子として待遇され、十三回目の誕生日の後の安息日には、神殿における戒律書の読誦会に出席
して祭司と交互にこれを朗誦する。父はその子が宗教生活に入ったことについて神に感謝を捧げ、
家庭でも近親を招いてし朝餐の祝式が行われる。ユダヤ人のこの十三の儀式は、日本の十三詣り
に当たる。男女共に十三歳に達すれば、陰暦三月十三日に父母または兄姉に伴われて神社に参詣
する風習と同じで誰もこれを偶然とはいえないであろう。

 男子が元服の後に童名を改めることが昔の日本でも行われていた。即ち『曽我物語』第四巻に
「兄の一万は十三歳の十月の半の頃、元服して男になしつつ、継父の片名を取リ、曽我十郎助成
とぞ呼ばれける」とある。その他源氏の正統である少年の源太は十三で元服して八幡太郎養家と
なった等その例は多くある。ユダヤにあってもこれと同一の風習があリ、ソロモンの幼名をエデ
デアといったが、十三の歳に元服してソロモンと命名されたのはその一例である。因みに、日本
人の名の終りにモンをつけるものが多いが、これはユダヤ人がその名の終りにつけたモン、即ち
ソロモンなどのモンによく似ている。赤児の誕生後三十一日日の宮詣りといい、十三歳の儀式と
いい、数と風俗が日本とユダヤではよく一致するのである。
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