No.16

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プロトコール 十二
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    自由≠ノついてのメーソンの定義。新聞の将来とメーソン王国。新聞の統
      制。通信の代理人。メーソンが理解している進歩とは? 新聞について
      の追加事項。今日の新聞におけるメーソンの連帯。地方公衆≠フ声を
      挙げさせること。新体制の不可謬性。

自由≠ニいう言葉には、いろいろの解釈があるが、われわれは次のように定義する
「「自由とは法律で許されたことをする権利である。この定義は通常はわれわれだけ
に役立つ定義である。なぜならば、法律というものが前に述べた計画に従って、われ
われが思いのままに作ったり廃止したりできるものであるから、およそ自由と名の付
くものはすべてわれわれの手中にある。
 新聞については次のように扱う。今日の新聞の役割とは何か? それはわれわれの
目的には有利な激情を爆発させ燃え上らせることに役立つ。さもなければ、諸党派の
利己的な目的に役立つ。新聞は多くは浅薄、不当、虚偽であり、大多数の人々は新聞
が本来何の役に立つのか考えようともしない。

が、われわれは新聞に鞍を置き馬勒を
付け、しっかりと轡をはませる。他の印刷物についても同様である。われわれが新聞
の攻撃から免れても、小冊子や書籍の攻撃の的にされたままだったらどうなるか?
出版物の刊行は、今日ではそれを検閲するとなると大変金のかかることであるが、わ
れわれはわれわれの国家にとって得な財源に変えてしまう。新聞等の発行団体や印刷
所に許可を出す前に、特別印紙税と[損害に備えての]保証金を納めさせるのである。
これをやっておくと、新聞等のいかなる攻撃からも政府を守ることができる。われわ
れに対する新聞等の攻撃などがあろうものなら、われわれは仮借なく罰金を科する。
保証の形をとるこのような印紙税、保証金、罰金といった方法は、政府の大いなる財
源となるであろう。

政党の機関紙は多額の罰金を取られても平気であろうが、以上の
手を打てば、われわれに対して重ねて攻撃をした場合は断乎発行禁止処分に付する。
われらが政府の不可謬性の後光に指一本でも触れようものなら、何びとも無事ですむ
ことはありえないのである。発行を禁止するには、何ら理由も根拠もなく公衆を煽動
したという申立て理由を使う。一言御注意申し上げたいのは、われわれを攻撃するも
のの中には、われわれが設立した機関も含まれるということである。だが、かれらは、
われわれが予め改正しようと決めた部分のみを攻撃するのである。

 一片の記事といえどもわれわれの検閲抜きには公表されることはない。現在ですら
すでにこのことは達成されていて、すべてのニュースは少数の通信社に世界中から集
められそこから配付されるようになっている。通信社は追って完全にわれわれの傘下
に入り、われわれが許可したものだけが一般に供給されるようになるだろう。
 今日すでにわれわれはゴイ社会の人心をうまく掌握しており、かれら全員は世界の
出来事を、われわれが鼻にかけてやった色眼鏡で眺めているに等しいとしたら、また、
われわれには、ゴイの阿呆どもが国家の機密≠ニ呼んでいることに立ち入るのに障
碍のある国家なぞ一つも存在しないとしたら、全世界王という最高の統治者として認
められた暁には、われわれの立場はいかがになるのだろうか……

 話を新聞の将来に戻そう。誰であれ、出版人、司書、印刷人たらんとする者は、そ
の資格免許証を取得することを義務づける。その免許証は何か過失があれば即刻取り
消しとなる。こうしておくと、思想を伝えることが、われらの政府の手中にある教育
手段となるのである。この教育手段を講じておけば、国民大衆にもはや脇道や、進歩
の有難みなどといったたわけた夢の小道に迷い込ませはしない。われわれの中には、
ありもしないその手の有難みは、人民と政府との間に無政府状態を生じさせる妄想に
直通する道であることを知らない者がいるだろうか。

如何となれば、進歩、いや、進
歩思想は、あらゆる種類の解放運動を激励してきたが、限度ということを弁えなかっ
たのである……いわゆる自由主義者は、実際はともかくとしても思想に関しては例外
なく無政府主義者である。自由主義者のどの一人も自由のお化けを追い求め、まっし
ぐらに放縦に、すなわち、反対のための反対という無政府主義に陥っている。
 定期刊行物の問題に移ろう。印刷物という印刷物に、一頁につきいくらという印紙
税と保証金を課し、三十枚[六〇頁]以下の書籍はその額を二倍にする。はやりのパ
ンフレットはその部類に入れる。

一方で、雑誌の数は減らす。雑誌というのは有害印
刷物の中では最低である。他方、著作人たちにあまりにも長大で値段もはるのでほと
んど誰も読まないような本を書かざるをえないように仕向ける。同時に、われわれの
利益に適うように世論を導くわれわれ自身の刊行物は廉価で、むさぼるように読まれ
る。課税で無味乾燥な作家の野心はしぼみ、処罰が恐くて文筆家はわれわれの軍門に
降る。かりにわれわれに文筆で抵抗する者が現われたとしても、著作物の印刷を引き
受けてくれる人間がいない。出版社が印刷してくれる前に、出版業者や印刷業者が官
憲の許可を得なければならない。これによって、われわれはわれわれに対して向けら
れた奸計をすべて事前に知ることができるので、それが世に現われないうちに抹殺す
ることができる。

 文学とジャーナリズムは、最も重要な教育手段のうちの双璧であり、それゆえに、
わが政府は大多数の雑誌の所有主となる。このことは、独立系新聞の有害な影響を緩
和し、公衆の精神に甚大な影響をもたらすだろう……仮に十の新聞に発行許可を与え
たとすると、われわれは三十に及ぶ新聞社を設立する。しかしながら、公衆はそんな
事情はゆめ知らず考えてみようともしない。われわれが発行する新聞はすべて、見た
目には反対の傾向や意見をもち、それゆえにわれわれに対する信頼を集め、われわれ
にとっては全き疑うことなき反対者を呼び寄せる。このようにして、われらの敵対者
は罠にはまり、牙を抜かれるのである。

 最前列に位置するのは、政府機関紙の性格をもった新聞であろう。この種の新聞は、
常にわれわれの利益を擁護するが、それゆえに比較的影響は弱い。
 第二列に位置するのは、半官半民の刊行物で、なまぬるい無関心層を惹き寄せるの
が役割である。
 第三列に位置するのは、見た目には全くわれわれの反対者として設立されたもので、
少なくともその紙上では、まさにわれわれとは逆の立場に立つように見える論説を掲
載するであろう。そこでわれわれの本当の敵対者は、この疑似反対論を真説と思い込
み、自分の手の内のカードを見せてしまう。

 われわれの新聞全体では「「もちろん、憲法が存続する間での話だが「「およそ考
えられるどんな傾向も「「貴族的、共和国的、革命的、さらには無政府主義擁護的な
ものまでも「「持っているだろう……インドのヴィシュヌ神の像のように、これらの
新聞は百本の手を持っていて、その一本一本の手が世論のどれか一つに指を触れる。
脈拍が早くなると、これらの手はわれわれの目的に向って世論を導く。熱に浮かされ
た患者は理性の判断力を失い、暗示にかかり易くなるのである。自分たちの陣營の新
聞の意見を述べていると思い込んでいる阿呆どもは、誰ぞ知らん、われわれの意見や
われわれが望んでいる見解をオウム返しに唱えているだけなのである。自分の党派の
意見に従っていると虚しくも信じつつ、実際にはわれわれがかれらに広げている旗に
従っているだけのことなのである。

 以上の意味で、われらが新聞軍団の指導にあたっては、格別細心の注意を払ってこ
の問題を組織しなければならない。中央新聞局という名称のもとに、われわれは文筆
家の会合を設け、そこにわれわれの覆面の代理人を送り込み、指令と当日の標語を示
す。問題の核心を避けて常に表面だけにとどめた議論討論をして、ただ単に、当初の
公式表明を補足する材料を提供する目的で、われわれの機関は、われわれの公式の新
聞に対して見せかけの一斉射撃を浴びせる。

 われわれに対するこの集中砲火は、ほかの目的、すなわち、言論の自由はまだちゃ
んと存在していると納得させ、われらが代理人に、反対者たちはわれわれの指示に対
して、実のある反対意見をこれっぱかりも示さなかったからには、われわれに反対す
る機関はみな空騒ぎしているだけではないかと断言する材料を提供する。
 公衆の目には感知されないが絶対確実なこのような組織方法は、公衆の関心と信頼
をわが政府に惹きつけておくのに最高の方法である。この方法のおかげで、われわれ
は公衆がどう受け取るかによって、必要に応じて時折、政治問題に対する感情を刺激
したり鎮静したり、説得したり混乱させたり、今日は真実明日は虚偽、事実に即して
立論したと思えばその反論を掲げたりするが、常にわれわれが足を踏み出す前に地面
の様子を細心の注意をもって調べるのである……われわれの敵対者は、前記の方法で
新聞を操作することができず、十分かつ決定的な意見を開陳する新聞という最終的な
手だてを欠いている以上、われわれの勝利は確実この上もない。よほどのことでもな
ければ、反論の必要もないくらいである。
 われわれが新聞の第三列に放つ試射は、必要があれば半官半民の紙上を通じて精力
的に駁論する。

 フランス新聞界のみではあるが、今日でもすでにメーソンの連帯行動を物語る形態
があり標語ももっている。すべての新聞機関は、結束して職業上の秘密を守っている。
古代の卜占官さながらに、その成員は、過去に解決ずみの問題でない限り、情報源を
漏らしたりはしない。ジャーナリストならただの一人もこの秘密を暴露するような愚
挙を犯しはしない。というのは、どの一人をとってみても、かねて過去に不行跡な事
などをしない限りは、文筆仲間に入れて貰えないからである……秘密を漏らしたりし
ようものなら、直ちに過去の不行跡が暴露されるというものである。秘密が少数の間
でだけ知られている限りは、ジャーナリストの権威は大多数の人々に行きわたり「「
群集は熱狂的に彼に従う。

 われわれの計画は特に地方に及ぶ。いかなる瞬間にも首府に希望と欲求を浴びせら
れるよう地方の炎を燃え上らせることが必要不可欠である。われわれは首府に向って、
これが地方独自の希望であり欲求であると焚き付ける。当然のことであるが、地方世
論の情報源というのは、同一無二のもの「「われわれが指示しているものなのである。
必要なことは、われわれが十二分に支配力を得るまでは、われわれの代理人団が組織
した多数者、すなわち地方の意見で首府を窒息させておくべきである。必要なことは、
決定的瞬間には首府は既成事実をとやかく言える立場にはないということである。そ
れは単純な理由であって、各地方の大多数の世論が受け入れている事実だからである。
 われわれが完全な主権を手中にするまでの過渡期の新体制の時期まで進んだら、も
はやどの種類の新聞にも社会腐敗を暴露する記事は載せさせない。新体制下では万人
が完全に満足しているから犯罪を犯す者はいないと信じさせることが必要である……
犯行の真相解明は、被害者とたまたま目撃した者だけに留めておくべきであって、そ
れ以外には必要ない。