10 ユダヤ人は神の民となることをやめて、悪魔の民となった

イエス・キリストが、パリサイ派の偽善をあぱき、彼らが心中ひそかにモーゼの律法の破壊を図っていることを、公衆の面前で弾劾したとき、パリサイ派の権威は震憾した。そこで、サンヘドリン(最高評議会)を握るパリサイ派は、群衆を扇動してイエスを殺した。イエスの使徒たちが布教を続けると、バリサイ派は使徒らを迫害し、ついに十二使徒の一人、ステパーノは、パリサイ派によって石もて打ち殺された。それでもなお、使徒たちはローマ帝国の全城で伝道を発展させ、パリサイ派は危機に瀕した。そこで彼らは、ローマ帝国の官憲を動かして、キリスト教徒を追害せしめたのだ。世に有名な、ローマ皇帝ネロの時代のキリスト教弾圧は、実はユダヤの仕掛けた謀略である(ネロの愛妾、ポンベヤはユダヤ教徒であり、ネロの宮廷には、有力なユダヤ教擁護者がいた)。原始キリスト教会は、そこで「ユダヤ人は神の民となることをやめて悪魔の民となった」と断定し、それを教会の公式の立場とした。

ここでユダヤ人というのは、パリサイ派によって乗っ取られ、変質せしめられたユダヤである。ユダヤ人のなかでパリサイ派の欺瞞に抵抗したのは、イエス・キリストの一派(彼らは、ユダヤの枠を超え、すべての国民に布教した)のみではない。モーゼの律法を堅持して、パリサイ派の秘密結社の策謀に反対する人々は、カライ派(「カラ]律法」を信奉するもの)を結成した。彼らは、バイプルのほかに聖書を認めず、タルムードを拒否する。キリスト教徒に対してはきわめて好意的であった。

パリサイ派は、この人々を迫害し、虐待した。パリサイ派の構築したユダヤ教の枠組は次のごとき三重構造になっている。第一にモーゼの律法を捨て、エホバの神も否定した悪魔教である。しかしこれは秘密であり、パリサイ派の指導層にのみ伝えられる。これがカバラである。第二にカバラの悪魔的精神を具体化した文書で、タルムードという。これは、パリサイ派の指導下のユダヤ人のみに伝える。第三に二世紀から二仕紀にかけて、カバラ=タルムードに合わせて偽造されたトーラー(いわゆる旧約聖書)である。(エレミヤはこの考えには同調しない)これは、パリサイ派の外部に向けられた顔である。この偽造された旧約聖書の員に、キリスト教徒とイスラム教徒をおぴき寄せる算段である。原始キリスト教会が〃ユダヤ人は悪魔の民となった〃と規定したとき、彼らにはまだ、この構造全体が見えてはいなかったにしても、その本筋は正しかったのだ。