…抗生物質の効かない結核が、なぜ復活をとげたのか

 結核に話を戻そう。一九九三年、WHOが遅ればせながら、結核は世界的な緊急事態であると宣
言した。かつてなかったことであるにもかかわらず、既存のメディアはこの深刻な状況に対して何
の声もあげず、ほとんど一切注意を払わなかった。例外は医学関係の雑誌だけだった。結核は当時
も現在も、成人死亡原因のトップにくる病気だ。疾病管理予防センター(CDC)が発表した一九
九〇年の数字では、全世界の結核による死亡者数は二五〇万となっている。
 これはかなり控えめな数字だ。情報局筋による独自調査の数字では、アフリカとインドだけで二
五〇万人以上が結核で死亡している。これにはタイ、カンボジア、中国での膨大な死亡者数は入っ
ていない。この情報局では、これを一九九〇年で二〇〇万人(!)としている。他地域の数字は手
に入らないが、米国でも、相当な人数が結核で死んでいる。同じ情報筋の報告では「二〇〇五年ま
でには最低でも二〇〇〇万人が結核で死亡するだろう」となっている。

 この、抗生物質の効かない新世代の結核変種の拡大をストップする対策は、ほとんど何も打たれ
ていない。一九九二年には、ホームレスの男性ひとりからミネアポリスで結核が流行するという事
件があった。この男性はある酒場に頻繁に顔をだしており、短い期間に四一人がこの病気にかかっ
てしまった。だが、市の医療当局は、少なくともその一〇倍の人数が感染している、だが、職を失
ぅことを恐れて名乗り出てこないのだと考えている。この経路での感染者が他にどれだけいるのか、
誰にも分からない。この事件は、一人の人間から五〇〇人が感染した可能性のあることを公認して
いる。そして、このようなことが米国中、いや実際には、世界中で起こっているのだ。

 小滴で感染する結核からは逃れられる者はいない。特に恐ろしいのは航空機に乗る場合だ。なに
しろフライトの間中、同じ空気が循環しているのだ。わたし自身、家族も含めて、予防措置なしで
は決して飛行機には乗らないし、長いフライトではもう一度やる。どれほどの酒場やレストランで、
このミネアポリスのようなことが繰り返されているのだろうか。ミネアポリスでの流行源を追跡し
たスーザソ・E・クライン医師は、控えめな表現で言った。「酒場やレストランでの結核の拡大は、
大問題になる可能性がある」

 こうして結核が目を見張るような復活を遂げた理由 − 研究室で 「仕立てた」という疑いは別に
しておこうーのひとつは、世界中に膨大な数のHIV感染者がいることだ。結核菌は免疫力の低
下した人間が大好きなのだが、HIV感染者は結核菌の侵入に対してまったく抵抗力をもたない。
HIV感染者は、非感染者と比べて三〇倍も結核にかかりやすい。これはマラリア、ヴイブロ一九
型コレラ、髄膜炎の感染者も同様で、どれも今日の世界でさかんな病気だ。相当なお人好しでない
限り、この死の 「伝染病カクテル」 は、特定の目的をもって事前に準備されたものだと考えるだろう。その目的とは、「グローバル二〇〇〇」大量殺りく計画にしたがって二〇一〇年までに世界から二五億人を消し去るということだ。

 どの地域であれ結核の症例数が増加しているということは、そこで確実にHIV感染者も増加し
ていることを示している。なぜ結核での死亡率が高いのか。その理由をたどると、つぎのようにな
る。
 

 @研究所で仕立てられた新しい菌がばらまかれた。最初は一九八〇年で、これには既存の抗生物
 質は効力がないか、あってもごくわずかしかない。
 A第三世界各国での経済破綻によって、結核患者が治療を受けられず、また患者を隔離するとい
 う対策も取られなかった。医療システムのレベルが低いことから、結核での死亡者は記録的な
 数になるだろう。さらにここまでで、IMFと世界銀行がこの点で果たしている役割にも十分
  気づいてもらえているはずだ。

 アフリカ以外では、中国の結核症例数がもっとも多い。ニューヨーク市も、市街地での単位面積
あたり症例数では中国にひけを取らない。ニューヨークの税基盤が侵食されるにつれ、結核の症例
数は急上昇し始める。そこに多大なホモセクシュアル人口が存在したことでエイズの症例が驚異的
に増加し、その結果、結核が広がった。サンフランシスコでも同様の経験が報告されている。中央
および東ヨーロッパ二七カ国中二〇カ国でも結核が荒れ狂い、手に負えない状態となっており、ロ
シアでも驚くほどの復活を遂げようとしている。

 結核は、抗生物質を服用しても防げない。それでは抗生物質の効果を弱めてしまい、結核菌が抵
抗力をつけるのを助けるだけだ。エアコンも病気を広める大きな原因となっている。サンフランシ
スコでは、ホモセクシュアルがひと晩町へ出ようとするときには、家を出る前に手のひら一杯分も
の抗生物質を服む。彼らの免疫系が実際に衰弱していることはすでに確認されているが、それもこ
うやって、HIV感染の危険を減らすどころか、かえって高めているからだ。やたらと宣伝してい
るBCG注射も、成人のあいだに結核が広がるのを止めることはできないだろう。WHOもようや
く不承不承ながら、結核による死亡者数の推計をむこう五年間で一二〇〇万人と上方修正しだした。
それでもかなり低い数値だ。