3本の角の内の一つ、英国は獣の国、アメリカに追従する。

 

 
 

…ブレア政権に道連れ“イラク攻撃”の憂鬱
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●英米同盟と欧州国家のジレンマ

 ブレア英政権はブッシュ米政権による中東和平調停工作を後押しするとともに、
イラク問題では米欧間での調整役を務めようとしている。英国と米国の「特殊な
関係」を踏まえて、ブレア首相はブッシュ大統領と密接に協議しながら連帯行動
を維持したいところだが、国内外ではイラクへの軍事行動反対の声が大きく、米
国寄りの姿勢を貫きがたい状況だ。
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●米の中東和平工作を後押し

 ブレア政権は米同時テロ事件以降の反テロ戦争で米国のブッシュ政権と「肩を
並べて」連帯行動を取ってきたが、深刻化するイスラエル・パレスチナ紛争に対
して米国の積極的関与を促し中東和平調停工作を後押しすることでブッシュ政権
への影響力を確保しようとしている。

 米テキサス州クロフォードでの米英サミットに先立つ4日、ブレア首相は電話
会談でブッシュ大統領に、中東和平に一層指導力を発揮するように働きかけ、そ
の結果、同大統領はパウエル国務長官の中東派遣を決定した、と伝えられている。

 泥沼化しているイスラエル・パレスチナ紛争に関して、ブレア首相は3日、米
NBCニュースとのインタビューで「破局を迎えているような悲劇的状況だ」と
分析した上で、「われわれは適切な政治的プロセスに戻らなければならない。他
の方法はない」と語り、中東和平プロセスの再開が唯一の解決方法だとの見解を
示した。
 
 同首相は北アイルランド和平実現の経験を例に挙げながら、イスラエル、パレ
スチナ双方が殺し合っている状況下では当事者に解決能力はなく、外部勢力によ
る調停工作が必須だとして米国のイニシアチブの重要性を強調した。

 中東和平に対するブレア政権の考え方は、軍事力ではなく対話による解決を優
先させるものだ。ストロー英外相は4日、「彼らの唯一の未来は共存することで
あり、それは交渉によってのみ到来し得る」と語っている。

●「中東」の先には「イラク」

 ブレア首相は、イスラエル、パレスチナ双方が相手の存在を認めて和平交渉の
テーブルに着くこと、交渉ではアラブ世界全体がイスラエルの存在を承認する一
方、イスラエルと他の国々はパレスチナ国家の樹立を認めることが必要だとして
いる。

 こうした和平プロセスを軌道に乗せるためには、中立的な欧州連合(EU)や
アラブ寄りのロシアなども調停役として積極的に関与する必要があるが、イスラ
エルと密接な関係にある米国の影響力がとりわけ大きく、ブレア政権はブッシュ
政権による中東和平調停工作を積極的に後押ししている。そのうえで、イラク問
題では対立する米欧間の意見調整を図りたいとの考えだ。

 しかし、ブレア首相がブッシュ大統領に実際どれだけの影響力があるのかは定
かではない。同首相は先のインタビューの中で、大統領との会談は「対話であっ
て、戦略に関する討議」だと語り、どちらかが一方的に注文したり抑制したりす
る関係ではないことを指摘した。
 
 だが、これまでのアフガニスタンでの対テロ戦争、そして今後のイラクへの軍
事行動作戦でもブレア首相はブッシュ大統領に引っ張られている格好となってお
り、英国内ではブレア首相の米国寄り行動を批判する声が次第に大きくなってい
る。

●“イラク攻撃”では閣内造反か?

 ブレア首相は、タリバンとアルカイダに対する反テロ戦争では米国の意向を欧
州諸国やアラブ諸国に伝えることで成果を上げ、英国内でも多くの支持を得た。
しかし、ブッシュ政権が反テロ戦争の戦線をイラクに拡大することが明らかにな
るにつれ各国の米国批判が強まり、同首相は内外での協力協調体制づくりが困難
な状況に置かれている。

 EU諸国はイラク攻撃を共通議題にすることを避けており、ブレア首相が調整
する機会も見通せない状態だ。英国内では、与党労働党の左派議員を中心に140
人の下院議員がイラクへの軍事行動反対署名を行っているほか、政府内の何人か
の閣僚たちも反対意見だ。
 
 ブレア首相が米国に同調してイラク攻撃に踏み切った場合には、閣内造反があ
るばかりか首相の党内指導体制に挑戦する勢力が出てくる可能性も取りざたされ
ている。また、国内世論もブレア首相に批判的になっており、対テロ戦争支持率
(世論調査機関MORIによる)は昨年11月末の71%から今年3月中旬には52%
に落ち込んでいる。

 テキサスでの米英サミットで、両首脳はイスラエル軍の撤退とパレスチナ側の
停戦合意で共同歩調を打ち出し、ブレア首相はブッシュ政権への影響力を内外に
示唆できた。だが、イラク問題ではフセイン政権交代でブッシュ大統領に同調し、
同大統領に主導権を握られたままであり、欧州との調整役としては課題を残した。
02/4/12

●ブレア英政権、米の中東和平工作を後押し(英国)
●ブッシュ政権への影響力確保へ、イラク問題での米欧間の調整にらむ

 ブレア英政権はブッシュ米政権による中東和平調停工作を後押しするとともに、
イラク問題では米欧間での調整役を務めようとしている。英国と米国の「特殊な
関係」を踏まえて、ブレア首相はブッシュ大統領と密接に協議しながら連帯行動
を維持したいところだが、国内外ではイラクへの軍事行動反対の声が大きく、米
国寄りの姿勢を貫きがたい状況だ。