カシミール紛争の鎮静化とアフガンの英軍部隊激励を目的とした6日間の南アジア歴
訪を終え、ブレア氏がロンドンに戻ったのは8日。待ち受けていたのは、英国南西部を
まひ状態に陥れた大規模な鉄道ストだった。
9日の議会で行われた今年初の党首討論。野党保守党のダンカンスミス党首が「長い
間国を留守にしている間に、あなたの交通政策は茶番劇に堕した」「あなたに必要なの
は英国訪問だ」と皮肉たっぷりに攻撃。「鉄道の混乱は保守党政権による民営化の結果
ではないか」と、ブレア氏は反論したが、深刻さは隠せない。
配置転換や賃上げ問題をめぐる鉄道ストは、政府による中止の働きかけにもかかわら
ず、今後北部にも拡大しそうだ。
鉄道網そのものの老朽化も放置できないところにきている。朝夕のラッシュ時の列車
の遅れや故障は日常茶飯事。議会第3党の自由民主党は10日、「列車の遅れによっ
て、昨年英国民が無駄に費やした時間は総計4500年に相当する」との試算を発表。
同日にはへイン欧州担当相の「英国の鉄道は欧州最悪」との発言が閣内で物議をかもし
た。
新聞論調にも、鉄道に加え、医師、看護婦不足に悩む医療や、難航する警察官の処遇
改善問題など、政権の内政への取り組み不足に警鐘を鳴らすものが増え、「ブレア氏は
地上に帰れ」という見出しさえ躍る。
昨年9月のテロ事件後、「対テロ包囲網」のためにブレア氏が行った長期外遊はすで
に6回。訪問国はアジア、中東、欧州、米国など15を超え、来月にはアフリカ歴訪が
控える。首相府報道官は「テロとの戦いは英国経済、英国民を守ることにもなる」と、
歴訪の国内効果を強調するが、この「内外格差」は容易に縮まりそうもない。