米とイスラエルがイラクに新ユダヤ国家建設を計画

        ムスタファー・バクリー
        エジプト週刊誌アル・オスブー(2003年11月10日号)

        この報告にはいささかも誇張はない。この重大な情報はアラブ、イスラム諸国、特にイラクに隣接する諸国に伝えられた。シオニストとアメリカが第2のユダヤ人国家を建設するというものだが、今回は、エジプトのナイル河イラクのユーフラテス河までまたがる「大イスラエル国家」建設というシオニストの宿願をイラクで実現しようというものである。ワシントンはこの計画に対して沈黙しているが、本誌が入手した詳細を見ればイラクだけでなく、この地域全域に深刻な影響を及ぼすことが理解されよう。
        この計画は単なる計画でも、提案でもない。イラクに駐留する米軍の実際の参加を得て、現存の土地に実現しようとしているのである。

        ユダヤの圧力団体はイラクの悪化した経済情勢を利用して、アメリカとイスラエルの専門家によって練り上げられた計画を実施し始めている。計画実施の指揮はシャロン、イスラエル首相個人が執っている。
        アメリカ政府に提出されたあるアメリカの報告書によると、イラクの内部情勢は制御不可能である。
        国連付属の組織の報告によると、経済危機は頂点に達し、困窮者の割合は83%となった。そのうち50%はなんら収入を得る道がない、困窮線以下と、イラク経済は正に麻痺的状態である。農地の所有者でも農産物を販売するために作るのではなく、家族や親類縁者のために耕作している。

        この報告書によると、2万人以上のイラク人実業家が、隣接諸国や湾岸諸国、欧州に逃亡した。イラクの暫定統治評議会には何の実権もない。
        イスラエル政府は当初から、もともと対イラク経済封鎖時に発生し、クウェート侵攻及び今回のイラク占領で増大したイラクの経済的惨状に目を付けていた。
        イスラエルの動きを理解するには、以下の主軸を抑えておく必要がある。
        第1軸)10年以上前にアメリカとイスラエルの両諜報機関(CIAとモサド)で締結された戦略的協力協定に関するもの。この協定に基づきイスラエルは、アメリカパスポートを持たせた約560人の諜報部員を、10月中頃までにイラク国内に侵入させた。

        協定では最初は僅か100人の諜報部員の派遣で始まっている。彼らはイスラエルの司令部にのみ報告書を送っていた。モサド司令部は別の報告書を作成し、CIAに伝えていた。その後、諜報部員の数は増加し始め、ついにアメリカ人たちは、アメリカ人の名前のアメリカのパスポートを所有するイスラエルの諜報部員が560人もイラクに入国した事を発見するに至る。しかしCIAは抗議せず、協定の規定に基づき人数が増加した理由の説明をイスラエルに求めた。そこでイスラエル外務省は、人数の増加は治安上の必要から来ていると答えた。アメリカ政府は、この釈明を受け容れたのみでなく、さらに400人の諜報部員をイラク国内の特定の地域に派遣するよう期待した。これらイスラエルの諜報分子の基本任務は、イラクの政治、経済、社会情勢に関する報告書を毎日提出することである。
        これらのイスラエルグループ内には、指揮者であるシャロン首相にちなんで「首相」という名前の小グループが結成された。首相のみが報告書を閲覧し、基本的にイラク北部で活動する現在およそ8グループになったこれらの各グループに指令を発するのだ。

        現在イラク国内でモサドのグループが担う最も重大な任務は、イラクの土地取得に関する情報、所有者や彼らの出身、家族情報、経済的・社会的状況、また直面する可能性のある治安上の問題点の収集である。
        これらのグループは、多数のイラク人、特に土地の売却を望み国外に移住を希望する実業家、また土地売却を容易に説得できそうな者たちの名簿の作成を完了した。
        第2軸)イラク国内で活動するイスラエルの民間人グループ
        当初これらのグループは、CIAの管轄下にあると考えられていたが、最近、モサドの指揮下にあり、ユダヤ系アメリカ人のほかに実業家や軍人を擁していることが判明した。これらのグループはイラク国内にある軍事、民事両当局の密接な協力の下に活動している。グループの目的は、購入可能な土地の実見、評価、及び安全地帯の調査、非安全地帯からの距離、並びに売買方法を協定することである。
        かつてサダム・フセイン元大統領政権は、外国人に土地を売却することを禁じていた。そこで、アメリカによって任命された暫定統治評議会が、設立後真っ先に採択した決議は、この旧法を廃止して、外国人への土地購入の門戸を開いたことである。イラクの連合軍の総督たる暫定行政当局(CPA)のポール・ブレマー文民行政官は旧法廃止に重要な役割を果たした。

        第3軸)イスラエル首相府、CPA文民行政官事務所、及びアメリカの旅券を所持しメンバーは米軍将校の軍服を着用するイラク国内で活動するイスラエル委員会、ペンタゴンの軍事複合体の秘密協力。
        第4軸)本計画の要員たちはイラクの住民に、住居や土地を売却し、主に国外に移住することを勧誘する。そのための手段として、大金で釣ったり、この金額で他の土地や住居を用意したり、仕事の世話まで提供するのだ。

        これらの土地を購入するのは、別の国籍を持つイラクのユダヤ人かアメリカのユダヤ人、あるいはアラブのユダヤ人、モサドの手先の外国人やパレスチナ人たちである。
        モサドは、およそ100人のパレスチナ人などに働きかけ、実際にイラクの不動産を購入させたとの情報が流布している。
        情報によると、シャロン首相府はイラクのレジスタンス活動が激化した後、急いで行動するよう指令した。イスラエルは、ブッシュ政権がイラクから急遽撤退する決定を下すことを恐れたのである。
        以前、アメリカ−イスラエル委員会は、米軍がイラクから撤退した場合、ユダヤ人がこれらの土地の支配をいかにして保障するか協議している。アメリカ側は、仮に撤退するような事態になっても、米国こそがサダム・フセイン統治からイラクを開放したのだと強調して、ワシントンはイラクの政権を手放すことはないと示唆した。

        イスラエル側との調整委員会のアメリカ側責任者、ヒラーツ・フォード将軍は最近開かれた会議で、「ユダヤ人のためにこの地域に第2国家を設立することは全アメリカ人の連帯と支持を強化するであろう。それによりこの地域の緊張を緩和し、イラクのユダヤ人の全ての土地は、米軍撤退後でも米軍の直接的な保護を受けられる」と強調した。
        肝心なことは、イスラエルは猛烈な勢いでイラク北部で土地不動産を買い漁ったということだ。現在までのところ所有者は、欧米のユダヤ人のほかには、モサドやユダヤ人に協力するパレスチナ人やモロッコ人、シリア人であるとの話が流布している。
        果たして彼らの夢は実現するのか?
        このイスラエルの計画は、現段階ではイラク北部にユダヤの独立した国家を建設するのは困難であるとの考えに基づいていることは明らかである。なぜなら、この国家は現在では消滅する運命にある。しかし実行できる最善の方法は、誰か有力なクルド人と同盟を結ぶことだ。その際、アメリカがこの計画に支援することが欠かせない。
        情報によれば、シャロン首相は2−3週間前、複数の長文書簡を携えた2人の特使を派遣して、何人かのクルド人指導者と接触させた。これらの書簡は、イスラエルこそイラク北部にクルド人国家を建設するという彼らの夢実現に力を貸すことが出来る唯一の国であると強調している。しかし同時にイスラエルは、この目的でトルコとも協議をしていた。トルコも、この計画に従いイラクでの不動産購入に、重要な役割を演じることになっている。
        イスラエルは、この計画を達成するために、トルコとクルド人との間に合意点をいかにして見出すのであろうか? 情報によるとイスラエルは、クルド人がユダヤ人居住地をクルディスタン(クルド人の土地の意)内の中規模面積の土地に割り振ることを承認することの見返りに、クルド人に強力な軍隊を作り、この軍隊に必要な軍備を整え外敵から保護する約束をしたという。
        情報によるとイスラエルは、第1段階でこの地域にユダヤ人20万人を居住させ開発を推進するという。シャロン首相の複数の書簡によると、これらのユダヤ人は、イラク北部で特別な地位を持つことはない。彼らが求めるのは、彼らの土地や不動産に対する内部の攻撃から保護されることが全てである。同時にイスラエルは、元来クルド国家の土地を外部からの攻撃から保護する保障をするというものだ。
        イスラエルの計画では中央地帯に限定されることを望まない。言い換えれば、外部からの襲撃目標となることを避けるために、クルド人に囲まれた場所ではまずいのだ。もっとも、一部のユダヤ人は中心地域に土地を購入したようだが。
        情報によると、ユダヤ人たちがこれらの土地不動産に支払う金額は、相場の3倍になるという。しかし、ユダヤ人や外国人との売買が活況を呈しているのは、イラクの経済的、社会的、政治的状況の悪化が進行して、数千人のイラク人が国外への移住を希望したことが大きく作用している。
        クルド人の中にはこの考えを支持した者もいれば、反対した者もいた。しかしクルド人国家の建設の必要性には異論がない、この国家は内部にユダヤ人地域があることで強化されるという点では誰もが同意していた。なぜなら、クルド人国家内部に多数のユダヤ人が居住することが、この国を保護するためにイスラエルとアメリカやヨーロッパとの関係強化に繋がるからである。
        シャロン首相はクルド人指導者たちに宛てた書簡で、「ユダヤ人は基本的に被保護者の立場から、クルド国家を守ろうとする。またこの土地は、第1の祖国なのであるからユダヤ人は防衛するし、開発の発展に努める」と約束している。
        シャロン首相は、イラク北部に入植が予定されている20万のユダヤ人からなる第1団は、学術の分野や実務面で、或いは組織運営の面で、有能で著名な者で構成されると約束した。その主要な目的は、全ての科学技術の成果を取り入れる近代国家を建設するというものだ。首相は、この国家が米英のような近代文明のモデルとなるよう期待する。
        シャロンは書簡で、「彼らユダヤ人グループの優先事項は、いかにして隣人たちの教育水準を向上させるかである。なぜならユダヤ人地域の開発は、隣接地域の開発の一部になるからだ」と指摘した。
        「治安と彼らの共通利益を守る軍隊は、ユダヤ人とクルド人の連合の指揮下に置かれる連合軍となる」
        イスラエル委員会の動きが、最近活発化し始めたことが観察される。ユダヤ系アメリカ人の一部は、同委員会にユーフラテス河周辺の不動産や、不動産の売却を希望するイラク人に関する情報収集を求めた。
        イスラエル人たちは、特にユーフラテス川周辺の不動産の購入交渉をしている。不動産の新しい所有者となるのは。大部分が実業家のユダヤ系アメリカ人である。彼らはもともと、ユダヤ人の圧力団体、イーパックに所属しており、イラクの不動産購入のために1億ドルの予算を計上している。一方シャロンはこの目的のために約3億ドルの予算を組んだ。この金額は、“ナイル河からユーフラテス河まで”というイスラエルの夢を実現するための第1の目標の規模を示している。
        このようなユダヤ人のイラクの不動産を求めての侵入に対して、イラク人は警戒心を強め、「外国人に土地を売ることはユダヤ人やその一味にイラク全土を売り渡す第一歩だ」として、彼らに土地を売らないよう呼びかけている。
        一部のアメリカのユダヤ人機関は、基本的にいかにして多数のイラクの若者たちやイラクの家族に土地を手放し海外に移住するよう説得できるかに、この計画の成否がかかっていると見ている。
        現在この目的のためにイラク国内に3つのユダヤ人機関が置かれている。
        その1つは、“ボード海外移住エジェンシー”で、アブドッラシード・アルミフターフという名前の以前はアメリカ在住のイラク人が代表をしている。彼はイーパックの要員と言われている。
        第2の機関、“世界の国家は眼前にエージェンシー”は、アル・ハムーディー・アブドルアミールという元英国に居住していたイラク人が代表である。この男はイスラエルの対外諜報機関、モサドの要員と言われている。
        第3の機関は、“国籍インターナショナル・エジェンシー”である。
        これら3機関はお互いに協力して、イラクの若者たちを海外移住させるために、条件の良い仕事を通常の半額の手数料で斡旋している。移住先の国籍取得のほかにも、住んでいる住居の売却や新天地での住居の世話も手がける。
        これまでのところ、カナダとオランダ、デンマークが最も移住先として多い。
        イラン人たちがこの計画を嗅ぎ付け、シーア派教徒たちに、イラクの不動産、中でもスンナ派教徒たちやシーア派以外の者が所有する不動産、を購入するよう大々的なキャンペーンを張った。この措置はイラクのシーア派聖地を守るために執られたものだ。イランは、イラクの土地を購入するため世界中のシーア派教徒たちから集められた巨額の寄付金のほかに、この事業に5000万ドル近くを投入したといわれている。
        各種情報を総合すると、ここ2−3週間でシーア派は、土地取得に関して、特に強力な競争相手のいない土地では大成功を収めた。イランに協力するシーア派のグループは、困窮者はお金がどうしても必要なので、ユダヤ人などの外国人への土地の売却を止める呼びかけに一部の者が応じなくなった後には特に、イスラエルの危険性に対抗するため、ユダヤ人ともイラク北部の土地や住居購入で競争しようとした。
        土地購入の手続きは、一切秘密に行われる。ユダヤ人の代理人たちは、不動産の売り手とは地域の外で会い、そこで法律手続きが完了する。
        情報によるとイラクの若者約2500人がユダヤ機関の手でヨーロッパ諸国への移住が完了した。また、イラクの1000家族以上がこれらのユダヤ機関の勧誘に応じ、イラクの土地を手放した。不動産を購入したユダヤ人の新しい所有者は、一切そこには顔を出さず、購入した家屋にイスラエル製の鍵をかけておくだけだ。購入した土地には塀が設けられる。米軍による警護の下に、イラク人に賃貸される場合もある。
        不動産の警護を頼まれた米軍の将兵は、「イラクの抵抗勢力からもろに標的にされ、危険が増す」との理由で嫌がった。
        どうやら、この地域での第2イスラエル国家樹立を2007年か2008年に発表するというアメリカとイスラエルの合意があるようだ。
        トルコに関しては、アメリカがクルド人に分離あるいは独立国家を、イラク北部に設立するいかなる機会も与えないよう求めてきた。トルコ一国だけでも1200万人のクルド人が住んでおり、トルコの安全保障の点で重大な脅威となるからである。
        おそらくトルコがクルド国家建設に反対する立場こそが、トルコとイスラエルの関係が緊張している原因であろう。トルコは最近シャロンが予定していたトルコ訪問を断っているし、ほかにも関係進展を阻害することが起きている。トルコは、イラク旧政権下で接収された15万人のユダヤ系クルド人の資産をイスラエルが回復したがっていることに、遺憾の意を示した。トルコは、イスラエルの直接監督の下にイラク北部に建設を準備している小国家が、トルコ南部の治安を脅かし、ひいてはトルコ南部の土地をから北部に向けて侵食を開始しかねない新国家建設の道を開くことになると恐れている。

        (訳=草の根 「阿修羅」HPより)

        ムスタファー・バクリーはエジプト週刊誌「アル・オスブー」の編集者

        原文:http://www.elosboa.com/elosboa/issues/349/0401.asp
 
 
 

        【関連サイト】
        Greater Israel -- What Does It Really Mean? (Alfred Lilienthal)
        A 'Greater' US and a 'Greater' Israel (Information Clearing House)
        Sharon, Bush and the race for 'Greater Israel' (International Press
        Center)
        Israel's Grand Design- Leaders Crave Area from Egypt to Iraq (Media
        Monitors Network)
 
 

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