米軍がファルージャでナパーム弾を使用

マイク・ホイットニー
 
 

        2004年12月1日

        米国はファルージャでナパームを使っている。これまで、米軍はそれを否定しているが、証拠は増え続けている。11月28日、英デイリー・ミラー紙の政治担当編集者ポール・ジルフェザーは次のような報告書を提出した:「米軍兵士たちは秘密裡に、ファルージャ内部と周辺で、残った反乱勢力を一掃するために、禁止されたナパーム・ガスを使っている。ジョージ・W・ブッシュ大統領がナパーム──1980年に国連で禁止されたポリスチレンとジェット燃料の混合剤──の使用を公認したというニュースは、世界中の政府に衝撃を与えるだろう」。
        1週間以上にわたって、アラブのメディアでは、戦闘が最も激しいファルージャのジョラン地区を中心に、ナパームをはじめとする化学兵器を使っているとの噂が流れていた。いまや、米国のメディア管制にもかかわらず、ますます多くの証拠が流出しており、英国議会に大きな騒動をまきおこしている。ジルフェザーが言うように、「昨夜、怒りに満ちた労働党議員たちは、トニー・ブレアーと長時間論争し、ブレアーが下院に出頭すべきだと要求した。報告によると、罪のない民間人が、ジェル状のボンドが燃えながら肉に粘着し人間を火の玉とするナパーム弾の攻撃で死んでいる」。
        ブレアーは、激怒した議員たちに、「禁止された兵器」が使われていたことを知っていたかどうか明らかにするよう求められている。彼はまた、米軍がナパームの使用を続けるならば、英軍を撤退させるよう求められている。本記事を書いている現在、ブレアーがどう答えたかはわかっていない。
        米国は、バグダード包囲の際、ナパームを使ったことを認めた。ニュース報道が証拠を確認したのち、ペンタゴンは嫌々ながらそれを認めたのである。米軍は、この事実を、現在使っている新兵器と「伝統的ナパーム」は違うのだといって隠蔽しようとした。「改善された」兵器はペンタゴン名「マーク77焼夷弾」と呼ばれ、「環境破壊を減ずる」ためにジェット燃料を使っている。軍担当者が、人間を焼き殺して灰にするための道具を開発するときに「環境破壊」に配慮さえしていることから、これらの者たちに染みついた深いシニシズムを見てとることができる。
        ペンタゴンの些末事を強調する言い訳は、事実を誤魔化す役にはほとんどたたなかった。イラクから帰還した海兵隊員たちは、この爆弾をナパームと呼び、そして事実それはナパームなのである。英サンデータイムズ紙の記者サイモン・ジェンキンスは、ファルージャの出来事を次のように述べている:「大砲の中には、水では消せない火の幕を吹き上げる白燐弾を発射するものもあった。反乱勢力兵士たちは、皮膚を溶かす物質で攻撃を受けたと述べている。これは、白燐による火傷の特徴である」。耐えがたいほどの苦しみを伴う死に方である。
        独立系記者たちは、しばらく前から、米国がファルージャで禁止された兵器を使ってきたと報じている。イラクの医師たちは、自分たちが見た遺体の多くが「膨れ上がり、黄色くなっていて、臭いがしなかった」と述べている。アジア・タイムズ紙オンラインは、「米軍は、ジョラン地区、アシュ=シュハダ地区、アル・ジュバイル地区を爆撃する際、化学兵器を使った。これらの地区にはクラスター爆弾も激しく投下されたと語っている」と報じている。ペンタゴンが主張する「精密爆撃」を覆す情報である。
        米軍「軍属」メディアが、ファルージャの大規模な破壊と大虐殺を目にしないよう措置されているのは疑いない。今も街に溢れる疑わしい遺体が目に入らないようにするためである。これまでのところ、沈黙という共謀の壁により、米軍の戦争犯罪はかなり隠されてきた。けれども、幸いにして、米国以外のメディアと独立系記者のおかげで、真実は少しずつ明るみに出ている。近いうちに、世界は、ファルージャにおける米国の犯罪の全容を知ることで、ワシントンの「道徳的価値」をよりよく理解することになるだろう。
        「戦争犯罪」そして禁止された武器の使用についての告発は、国際赤十字委員会(ICRC)が発表したばかりの機密報告に続いて現れた。この報告では、米軍がグアンタナモ湾で「拷問に相当する」心理的そしてときには身体的強制手段を意図的に用いていることが確認されている。
        この報告は、米軍が捕虜の意志を挫くシステムを確立したと結論している。そのシステムは「侮辱を与える行為、独房への隔離、極端な温度、むりやり一定の姿勢をとらせること」などを用いるものである。「このようなシステムの構築は、情報を得ることにあると述べられているが、残忍で異常かつ品位を傷つける扱いであり拷問の一形態であると以外見なしようがない」(ニューヨーク・タイムズ紙)。
        同報告は、さらに、尋問の計画に際し「医者をはじめとする医療関係者が関与しており」、それは「医療倫理にあからさまに違反している」と指摘する。ペンタゴンが創設した情報収集体制を支援するために、「医者や医療関係者が捕虜の心理状態や尋問者への脆弱性に関する情報を提供している」(拷問スキャンダルの中心にいたジェフリー・ミラー将軍がアブグレイブ勤務から静かに配置換えされたことには誰も驚くべきではない。ブッシュ政権はこの新たな告発に対する人々の反応を予期しそれに対応した手だてを取ろうとしている)。ブッシュ政権により最高潮に達した(そして秘密メモの暴露によりはっきりした)ジュネーブ条約を忌避の理屈は、このICRC報告でより簡単に理解できるようになった。米軍がグアンタナモ湾でしちえることから、米国政府が人間の尊厳や人道法の最低最小限の基準にすら従わないことを、疑いの余地なく明らかにしている。ファルージャに対する焼夷弾の使用は、禁止された兵器の使用を禁ずる国際的な規則など米国は無視することを示している。これら一つ一つの絶望的な行為を通して、米国政府の無責任な犯罪行為がますます姿を現している。自分たちの目的を実現するために「可能なあらゆる手段」を用いる性向は、今後についての不吉なサインでもある。

        (訳=益岡 賢 「Falluja, April 2004 - the book」ブログより)

        原文:Firebombing Falluja (ZNet |Iraq)
        http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=15&ItemID=6772
 
 

        『私は皮膚が溶けた患者を治療した』
        インディペンデント
        ダール・ジャマイル
        2005年11月15日

        アブ・サバハは何か異常な事態を見たのだと気がついていた。昨年の11月、バグダッド大学のグランドにできた難民キャンプに座って、ファルージャから逃れてきたり排除されたりした家族のために働いているとき、ファルージャのジョラン地区から来た住民が、もっとも激烈だった戦闘の模様を目撃したのだと話してくれた。
        「彼ら(米軍/訳註)はキノコ雲のような煙をあげる奇妙な爆弾を使った」と彼は話した。「それらの爆弾の破片は大きな火の玉となって、火傷したところに人々が水をかけたあとでも、皮膚のうえで燃えつづけていた」のを彼は見たのだった。
        エンベッド取材(米軍への同行取材/訳註)を拒否する1人のジャーナリストとして、私はファルージャから追い払われた住民たちと話すのに何時間も費やした。ファルージャ郊外のサクラウィヤ地区で働いているファルージャ出身の医者は、米軍による包囲期間中、「皮膚が溶けてしまった」犠牲者を治療したことを話した。
        話をすることへの報復を恐れて、彼は名前をアハメド医師とだけ簡単に紹介するように求めた。「私が見た患者や遺体は明らかに炎をだす兵器で負傷していて、他には榴弾(りゅうだん)による負傷はなかった」と彼は言った。
        レバノン放送公社(LBC)の仕事をしていたフリーランスのカメラマンであるブルハン・ファサア氏は、戦闘がはじまって最初の8日間のさまを現地で目撃した。「いたるところでクラスター爆弾(焼夷弾もその一種/訳註)を目にしたし、弾丸を受けずに燃えて死んでいる多くの遺体を見つけた」と彼は話した。「だから彼ら(米軍)は明らかに燃える兵器を使っていたんだ、特にジョラン地区では」。
        ファサア氏は、自分の写真の2〜3コマをロイターに売ったものの、LBCの方は彼の提供するテープ(ビデオ)を放映しようとしなかった。彼は米軍兵士から撮影器具を取りあげられる前に、幾つかのテープを市外に密かに運び出していた。
        焼夷弾の使用を秘密にしようとする米軍の企みとおぼしき場面を目にした者もいた。「アメリカ兵がファルージャのそばを流れるユーフラテス川に相当数の遺体を投げこんでいた」──市外に追放された住民の1人アブドル・ラザク・イスマイルが説明した。
        2004年12月までファルージャで働いていたアハメド医師は、「ジョラン地区の中心部では、米兵たちが爆撃された民家をまるごと除去しようとしていて、その一方では、ほとんどの被弾した民家はそのまま放置されていた」と語った。
        彼はブルドーザーが土壌をかき集め、さらにトラックに積んで運び出すところを見たと言った。米軍が「特殊兵器」を使用した特定地区では、爆弾が破裂した現場ごとに200平方メートルの土壌が除去されていたと彼は言った。

        ※筆者はエンベッド取材でなくファルージャから報道するジャーナリスト。

        ※インディペンデントのウェサイトに掲載された記事は次をクリック。
        'Itreatedpeoplewhohadtheirskinmelted'
        http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article327136.ece
        ※『戦争を包むモヤ:白リン、ファルージャ、そして幾つかの論争点』は、次をクリック。この記事の関連報道である。
        The fog of war: white phosphorus, Fallujah and some burning questions
        http://news.independent.co.uk/world/americas/article327094.ece

        訳者による補足
        ▼ファルージャでの隠された虐殺
        (イラク情勢ニュースで紹介した関連記事の一覧あり)
        http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/2005_Fallujah-The_Hidden_Massacre.html
        ▼化学兵器および白リン弾に関して、ダール・ジャマイルの記事一覧
        (ダール・ジャマイルの Iraq Dispatches)
        http://dahrjamailiraq.com/weblog/archives/dispatches/000317.php#more

        (訳=山本史郎 「イラク・レジスタンス・レポート」HPより)
 
 

        白燐は「骨まで焼く」
        英デイリー・メール
        米軍はファルージャの戦いで白燐を使用した。そこで問う。なぜ化学物質がこれほどの論争になるのか?
        それは骨の上の皮膚を溶かし去り、犠牲者の顎骨を破損させる。 しかしヴェトナムでWillie
        Peteと呼ばれた白燐は、いまだ世界の軍事部門で使用されている。
        ナパームと同様に砲弾や手榴弾に使われるこの化学物質は、30度前後で自然発火すると高温と濃い煙柱が生じる。
        焼夷弾として使用されると、苦痛を伴う化学物質性火傷を起こし、火傷はしばしば致命的となる、と武器専門家は警告している。
        さらなる問題は、衣服や皮膚に付着した化学物質の粒子が気付かれないまま、空気に触れて燃え続けることにより起こる。
        多くの民間人が居住していたファルージャでの戦闘目撃者は、白燐による火傷が凄まじい苦痛をもたらしたと告発する。
        この武器が幅広く使用されたおそれがある。標的が反対勢力をのみならず、民家や建物の急襲にも使われたとする懸念だ。
        グローバルセキュリティorgの米軍情報専門家は、化学物質による火傷はしばしば「深く、苦痛を伴う」と述べた。
        『一般的に火傷は広範囲かつ深く、程度は様々です。目に入れば重症。粒子は酸素の乏しい環境でも燃え続けます』。同社は武器の説明にこう記す。
        『白燐はそれがなくなるまで燃え続けるため、これらの武器はとりわけたちが悪い。任務に就く者が白燐を浴びれば、即座に骨(に到達する)まで焼かれる』。
        武器協定で禁止されている
        敵方の位置を照らしだす目的での使用は可能であり、焼夷弾として敵軍に使用すれば効果的な守備軍需品となる。
        とくに物質名を挙げて禁止されてはいないが、80年の通常兵器協定プロトコール3で民間人に対する砲弾としての使用、民間人のいる地域の軍隊への空爆攻撃としての使用は禁じられている。
        英国ほか80カ国がプロトコール3に署名しているが、米国はしていない。
        米軍は照明および米軍を覆う煙幕として、ファルージャ戦闘期間に化学物質を武器として使用したことを認めた。
        米国が初期にイラクの都市における作戦行動で物質の使用を否定した事実が、民間人への白燐使用論争を暗にほのめかす。
        化学物質は、ロシア軍も94年12月のグロツニー(チェチェン)の戦闘において広範囲に使用した。
        米国政府の省のひとつ、Agency for Toxic Substances and Disease
        Registryは、煙の吸引における健康リスクに懸念を表明している。
        この化学物質は、治癒しにくい口の傷が、実質的に顎骨を破壊するまで進む「燐顎」として知られる症状を起すと考えられている。

        (訳=kamenoko 「阿修羅」HPより)

        原文:White phosphorus 'burns to the bone'
        http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/news.html?in_article_id=368800&in_page_id=1770
 
 
 

        【関連記事】
        集団虐殺の隠ぺいチームを編成 米諜報機関がファルージャで
        米軍による厳重な報道管制が敷かれているイラクのファルージャで、米軍が集団虐殺など犯罪行為を隠ぺいする工作を進めている。米軍は現在まで政治、報道関係者がファルージャに入ることを全面禁止している。15日付のヨルダンの週刊誌アッサビールが報じた。...(日刊ベリタ
        2004/12/17)
        米軍、化学兵器を無差別使用? 伊・国営放送がドキュメンタリー
        【ロンドン=池田千晶】イタリアの国営放送「RAI」は8日、米軍がイラクのファルージャで無差別に化学兵器を使用したと非難するドキュメンタリー番組を放映した。英BBC放送も番組放映直後に伝えた。
        番組は、「ファルージャ−隠された虐殺」のタイトルで放映され、白リン弾と新型ナパーム弾が使われたと指摘。米、イラク両軍がファルージャで反政府勢力の大規模な制圧作戦を行った昨年11月、「『白リン弾を使うので気を付けろ』という声を現場で聞いた」との元米兵士の証言を伝えた。
        さらに、化学兵器が使われた証拠として、洋服は燃えていないのに体だけが焼けただれて変形した死体の写真などを紹介した。米軍はこれらについて否定している。
        番組では、白リン弾の使用は戦場の照明用にのみ許されているにもかかわらず、武器として使われたと指摘。証拠を示すものとして映像も多数撮影されている。
        イラクのタラバニ大統領は7日から5日間の日程でイタリアを訪問中。番組は、ベルルスコーニ首相と対談する直前のタイミングで放送された。
        イタリアは、イラクに3000人の兵士を派遣している。長引く駐留に、国民の間からは撤退を求める声が強まっている。(中日新聞 2005/11/09)
        米軍、イラクで「白リン爆弾」使用認める 「通常兵器」と
        ワシントン──米国防総省は15日、昨年11月のイラク・ファルージャ大攻勢の際、高熱で人体を焼くことのできる白リン爆弾を武装勢力拠点に対し使ったことを認めた。イタリア国営放送(RAI)の報道を部分的に認めたものだが、白リン爆弾を市民にも無差別に使ったとするRAI報道は否定した。また白リン爆弾は化学兵器ではないと強調している。
        国防総省のベナブル報道官は、見えにくい標的を浮き上がらせるなどのために白リン爆弾を使ったほか、武装勢力拠点に対して発火性の高い武器として使ったこともあると認めた。
        一方で、「市民に対しては使っていない」と繰り返した。さらに、白リン爆弾は通常兵器で、米政府が批准している国際条約で禁止されているものではないと述べた。
        ベナブル報道官は、陸軍機関紙の今年3〜4月号に掲載されたファルージャ戦記を報道陣に示した。ファルージャ戦に参加した士官や兵士たちが、戦闘法や使用武器・兵器について説明しているこの記事で、兵士たちは白リン爆弾は略号「WP(white
        phosphorus)」と呼び、「WPは効果的で使いやすい武器だった」「武装勢力を隠れ場所から引き出す作戦で使った」「塹壕やクモの巣状の穴に隠れている(武装勢力に)対する心理的武器としても有効だった」などと書いている。
        米軍がファルージャで化学兵器を使ったとのRAI報道を受けて、イタリア共産党系などの団体がローマの米大使館前で14日、座り込んで抗議した。
        米国務省は当初、白リン爆弾を敵対勢力に使ったことはなく、あくまでも「照明弾」や煙幕として空中に放ったのみだと公式サイトでコメントしていたが、後にこのコメントは誤りだったと訂正。その上で、「米軍はファルージャをはじめイラクのいかなる場所でも、違法な兵器は使っていない」と強調していた。
        兵器として使われる白リン爆弾は、酸素に触れると高熱を発して黄色い炎となって発火し、濃い白煙を上げる。人体に触れると重度の火傷を引き起こす。(CNN
        2005/11/17)
        米軍:白リン爆弾の使用認める ファルージャ攻撃で
        ロイター通信によると、米国防総省スポークスマンは16日、米軍が昨年11月、イラク中部ファルージャを攻撃した際、高熱で人体を焼く白リン爆弾を武装勢力に対し使用したことを認めた。
        同スポークスマンは、民間人に対する使用については否定。この爆弾は条約などで禁止された化学兵器には当たらないとして、使用は合法的と主張した。
        一方、英BBC放送(電子版)は同日、イラク人権省高官の話として、現地に調査団が派遣されたと伝えた。また、8日に同爆弾の使用を報じたイタリア国営テレビは、民間人が被害に遭った可能性を指摘している。
        国防総省は、煙幕を張ったり、武装勢力を隠れ場所から追い出したりする目的で使ったと説明した。
        ロイター通信によると、白リン爆弾はいったん火が付くと消すのは難しいという。特定通常兵器使用禁止制限条約の議定書は、人口密集地での使用などを禁じている。(ロンドン共同)(毎日新聞
        2005/11/17)
        国連が、アメリカ軍によるファルージャの化学兵器の使用を懸念しました。
        ファールス通信が伝えたところによりますと、国連の副報道官が、アメリカ軍がイラク・ファルージャで住民に対し白燐弾を使用したこと、またその住民への影響について、国連の懸念を報告しました。
        アメリカは、昨年、ファルージャの混乱を鎮圧するために、白燐弾を使用したことを認めました。
        一方、イギリスのリード国防相も、16日水曜、イラク駐留のイギリス軍が白燐弾を使用したことを認めました。(IRIBラジオ 2005/11/18)
        米国:白リン弾、無差別使用疑惑 イラク・ファルージャ「炎の雨が降ってきた」
        ◇骨まで焼き尽くす残虐兵器
        米国が昨年、イラク中部ファルージャでの武装勢力との攻防の際、民間人に対し残虐兵器である白リン弾を使用した疑惑が浮上している。イタリア国営テレビが報じたのがきっかけだ。白リン弾は照明弾や煙幕に使われ、人体に触れると燃焼時の高熱で「骨まで焼き尽くす」といわれる兵器。米国防総省は「民間人への使用はない」との立場だが、「使用が妥当だったか調査すべきだ」と指摘する専門家もいる。【ワシントン和田浩明】
        焼けただれ、溶けたような子供の顔。イタリアの国営ニュース専門チャンネル「RAIニュース24」は、11月8日、米、イラク両軍が昨年行ったファルージャ制圧戦で死亡した住民の衝撃的な映像を放映した。
        ◇民間に多数の犠牲
        ファルージャでは、昨年3月に米軍雇用の民間人4人が武装勢力に惨殺された。怒った米軍は翌月、最初の大規模掃討作戦に乗り出したがイラク民間人にも多数の犠牲が出たため、国際社会からの非難を浴びて撤退。米軍は11月になって作戦を再開し、全市を制圧した。米軍の死者は同月だけでイラク戦争開戦以来最高の136人になったほど攻防戦は激しかった。
        RAIによると、遺体の映像は現地で医師や住民が記録したもの。番組は、「炎の雨が降ってきた」といった住民の証言や、同作戦に参加した元米兵への取材を元に、米軍が無差別に白リン弾を使用し民間人が犠牲になったと告発した。
        白リンは空気中の酸素と反応して激しく燃焼する。発生する熱は2500度を超え、大量の煙が出るため、照明弾や煙幕として長年戦闘に使われてきた。第2次大戦末期の沖縄戦では、米軍が洞くつ内の日本兵の追い出しにも使用した。
        米国防総省はRAIの放送後「白リン弾は使用が禁止されている化学兵器ではない。ファルージャではあくまで照明、煙幕用に使用した」と説明。番組が白リン弾を化学兵器としたこともあり、同省は「イラク駐留米軍を不当に非難するプロパガンダだ」と反発した。
        だが、今春、ファルージャ戦を特集した出版物の中で、米陸軍が、市内に立てこもる武装勢力を対象にした攻撃に白リン弾を使用したと指摘していたことが判明した。その中で陸軍は、「ざんごうなどにこもる敵に対して強力な心理効果を持つ非常に有効な兵器だ」などとした。
        ◇「武装勢力が標的」
        これに対し、欧州のメディアから、「人に対して使用したことを隠ぺいしようとした」と非難が上がり、同省は武装勢力に対し使用したことを認めたが、民間人への使用は否定している。ペース統合参謀本部議長は11月29日の定例会見で、「国際条約が禁ずる焼夷(しょうい)兵器ではない。民間の被害が出ないよう注意を払っている」と説明した。
        白リン弾は04年4月の掃討作戦でも使用されたことがわかっているが、同作戦に従軍取材した米カリフォルニア州の地元紙記者は「白リン弾を迫撃砲で市内に撃ち込んでいる米兵らは、標的が何なのか知らない」と報告し、白リン弾の無差別使用を示唆した。
        米軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長は「国防総省がきちんと調査することで、米軍に対する疑念を解くことができる」と指摘する。しかし、同省は毎日新聞の取材に「調査は考えていない」と回答している。(毎日新聞
        2005/12/01)
 
 
 

        【関連サイト】
        人体の内側から焼く兵器、その名は「ウィリー・ピート」〜イタリアRAIニュース報道(Falluja, April 2004 - the book)
        「イラク駐留米軍はファルージャで化学兵器を使った」イタリア国営放送がドキュメンタリーで証拠ビデオを放映(暗いニュースリンク)
        US 'uses incendiary arms' in Iraq (BBC News 2005/11/08)
        US forces 'used chemical weapons' during assault on city of Fallujah
        (Independent 2005/11/08)
        U.S. Army publication confirms United States used incendiary weapon in
        Falluja (Raw Story 2005/11/09)
        UK used white phosphorus in Iraq (BBC News 2005/11/16)
 
 
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