■生物兵器実験室の産物、スーパーバクテリアの新変種群

 まさに襲いかからんとしているこの大規模な伝染病に勝るとも劣らないのがスーパーバクテリアだ。これはペニシリンによる通常の上級疾患治療に対して強い抵抗力があるので、ペニシリンが効かないケースがどんどん増えている。その数はインフルエンザの優に三分の二に達している。WHOの専門家や疾病管理予防センターの医師らによれば、これは、抗生物質に対する抵抗力の強い「スーパーバクテリア」 の新変種が全米にわたって現れてきているということを意味する。もうひとつ、スーパーバクテリアに乗り越えられつつある抗生物質が、「二一世紀の抗生物質」といわれたバンコマイシンだ。

 スーパーバクテリアのひとつは、多種の毒物に抵抗力をもつ 「スタフィロコクス・アウレアス(黄金のブドウ球菌)」というブドウ球菌の一種であることが分かってきた。この 「攻撃性ウイルス」はきわめて日和見的なものと考えられており、また、人体外で長期間生存することができる。このウイルスは、たとえば病院のベッドのシーツに隠れていて、皮膚のごくわずかな裂け目から体内に侵入する。いったん体内に入ると全面的な攻撃に移り、すぐに発熱し、強いショック症状を起こして死にいたらしめる。全米の病院がこのブドウ球菌の大量発生を報告していて、なかには一日に六件が報告された例もある。以前は全くなかったか、あっても月に一、二件だった。

 マイケル・ソーポール博士が実験室での研究によって明らかにしたところでは、このおそらくは人間が作り出したスーパーバクテリアは、バンコマイシンのような抗生物質と闘うように 「教育=遺伝子構造にプログラム)」されているという。マイシン系のこういった抗生物質は、あらゆるバクテリアと新種ウイルスの多くを殺すはずで、つい最近までは、HIV、マラリア、髄膜炎、C型肝炎などの新変種ウイルスによる病気と闘ってこれを抑制する、一大発見として激賞されていたものだ。

ソーボール博士は 「フオートデトリックでの試験管テストでこうなったということは、あ
とは時間の問題で、じきに戦争用CAB兵器として大量生産されるようになる」と言う。
 スタフィロコクス・アウレアスは大腸菌の治療に使う抗生物質を避けて通るようになってしまったが、この抗生物質は、増加しっつある 「ウシ海綿状脳症」、いわゆる狂牛病を抑制するためにも重要なものだ。狂牛病はニューメキシコ、テキサス、フロリダの各州で発生していて、むこう二年間に米国人数百万人が死亡する可能性をもっている。これを根絶・防衛するための対策を緊急に執らねばならない。
 
伝染性の強い結核の新変種が大規模に発生していることも、米国ではほとんど知らされていない。抗生物質の効かないこの新変種はサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスでもっとも広がっている。これはHIVウイルスにつく「コバンザメ」 のようなもので、結核による死亡と報告されているうちの数千件は、実はエイズによる死者だ。

 ボツリヌス毒は、CAB実験室で作られるもののなかでも致死率の高いものだが、このバクテリアが 「テスト走行」として空からばらまかれているという可能性がある。繰り返すが、米国の政府が自国の国民に対してそんな行動をとるはずがないなどと誤った考えをもってはいけない。この毒素は、クロストリジウム・ボツリヌムというバクテリアによるボツリヌス中毒を引き起こす。このバクテリアは研究室で培養される。食物の摂取ないしは空気の吸入によって感染し、一-三日で症状が頼れる。激しい嘔吐、めまい、下痢が起こり、筋肉が衰弱し、呼吸をつかさどる神経系に機能不全を起こし、虚脱状態に陥って死にいたらしめる。
 
腸チフス熱も地球上から根絶されたと思われていたが、インド、中国、ラテンアメリカ、ミヤンマー、パキスタン、ブラジル、バングラデシュのいたる所で見られるようになってきており、発病から死亡にいたる例は衰えることもなく、潮が寄せるように増加している。腸チフスのバクテリアはもっとも製造の容易なCAB毒であり、米国、中国、ロシアからイランのような小国にいたるまで、間違いなくこの死のバクテリアを大量に貯蔵しているはずだ。いったん放出されれば、このバクテリアは驚異的な割合で繁殖、増加する。何もしないうちに数百万人が腸チフスに飲み込まれ、世界中でばたばたと死んでいくのだ。

 炭疽菌も新たに、より凶暴な姿でここ米国、ロシア、中国、イランで製造されており、北朝鮮(ほば間違いない) とリビア (たぶん) でも作られているはずだ。炭疽菌は安価で製造も容易であり、しかもそれだけで、どんな核兵器よりも多くの死をもたらす。致死率はきわめて高く、人口が密集していれば混合物二キロあまりで三〇万人-ピッツバーグほどの都市の人口-を殺せるだろう。散布するのもいたって簡単だ。旧式のタンクローリーで散布してもよいし、空からでもまける。