危険なアメリカ福音派の信仰:

それは、ブッシュ政権の戦争を肯定する。

      
       ピール・S・ダイヤー
                                                                                                                                                                                      聖書はイラクの体制転換を予告しているだろうか。イ
   スラエルの国境は数千年前に神が定めていたものだろう
  か。国連は、悪魔の支配する世界の先触れなのだろうか。
    これらの問いすべてに対してきっぱりイエスと答える
   人々が、米国には何百万人もいる。聖書の預言を信ずる
   人々の多くにとって、プッシュ政権の孤立主義的な対外
   政策も、イスラエル・パレスチナ紛争に対する不干渉政
   策も、イラクに対して仕掛けようとしている戦争も、決
   して単なる自国の利害のための行動や、対テロ戦争の延
            長などではなく、現に開示されつつある神の計画の一部
    なのだ。
 

      信仰のフィルターで見る人々


     久しいあいだ、福音王義的なキリスト教徒たちは、米
国での公共の言説において、「信仰の人々」が十分な尊 
 敬を受けず、宗教的信仰が低い位置を与えられてきたと  
  いう不満を持ちつづけてきた。イエール大学法学教授で 
 福音主義的クリスチャンであるステイーヴン・L・カー 
 ターが一九九三年の著書『不信仰の文文化」で主張してい 
 るのは、そういうことだ。少なくとも、私自身の専攻分 
 野である米国史に関するかぎり、カーターにも一理はあ    
 る。

一部の注目すべき例外はあるものの、文化史家は長 
 年にわたり、合州国における宗教の重要性を過小評価す 
 るきらいがあった。特に近現代史ではそうである。教会    
 史家には優れた業績が見られるものの、それらは、いさ        
 さか孤立し、より広範な文化史および知の歴史の潮流か 
 らは切り離されたものとしてである。

マーク・A・ノル  
の権威ある著作『米国の神」ジョナサン・エドワーズ  
からエイブラハム・リンカーンまで』(二〇〇二年)に見る 
 ように、事態は変化しつつあるとはいえ、全体としては、
 教会史が孤立したものとして捉えられているとの批判は
 当たっている。

  しかし、私は、宗教的信仰が公共政策を策定するうえ
 でほとんど役割を果たしていないとする上記のカーター
 の主張には、つよく異議を申し立てよう。実は、たとえ
 間接的で認めにくい仕方ではあったにせよ、宗教は政策
 形成過程において、常に途方もなく重要な役割を受け
 もってきたのである。

  そして、このことは、現在の情勢には特にあてはまる。
 聖書的預言に対する信仰は、今日の米国外交政策に対す
 る草の根のレベルでの態度を、捉えがたいがきわめて重
 要な仕方で形成しているからだ。中東で行なわれようと
 している戦争をめぐって国民の間に論争が巻き起こって
 いる今、新聞の見出しやTVのニュースを、預言への信
 仰から成るフィルターを通して見る膨大な数の人びとの
 信仰に、我々は皆、注意を払っておいたほうがいいだろ
 う。
 

    「千年王国」


  豊富な証拠によって裏つけられていることだが、何百
 万ものアメリカ人が(公表されている全国世論調査の中には、
 この数は米国民のうち実に四〇%を上回る人々になるとするもの
 もある)、世の終りには聖書の預言に定められている一連
 の出来事がその通りの順序で起こると、ほんとうに信じ
 ている。

  いちばん広く流布している預言の体系である前
 千年王国説は、一九世紀の英国の牧師ジョン.ダー
 ビーが唱えたもので、それによれば、一連の最後の日の
 予兆が、近づきつつある終末を告げることになっている。
 戦争、天災、道徳の乱れ、世界の政治・経済的秩序の興
 隆、および神の約束の地へのユダヤ人の回帰などである。

                                           
  ダービーの体系では、今の「時代」(dispensation)は、
 真のキリスト信仰者が空中でキリストと一体となる「携
 挙」によって終りを告げる。次に来るのは艱難の時期で、
 超自然的な支配力をもつが悪魔的な存在である反キリス
 トがヨーロッパに現れ、世界的な権力を握って、「ヨハ
 ネ黙示線」(第一三章第一八節)に見える「666」という
 悪魔的な印のもとに普遍的な独裁体制を敷くという。

 その
 七年後に、キリストと聖者たちが戻って、パレスチナ北
 部ハイファに近い古戦場ハル・メギド(ヨハネ黙示録の「ア       
 ルマゲドン」)で反キリストとその軍勢を打ち破る。再建      
 成ったエルサレムの神殿から、キリストにより平和と正       
義の千年間、すなわち「千年王国」が開始されること    
 になっている。    
               
 ダービーが聖書のあちこちに見える黙示録的章句を巧 、   
 妙につなぎ合わせて作ったこの終末論は、米国では、     ′
 『スコフィールドの引照付き聖書)を出版し、   
 ベストセラーとしたサイラス・スコフィールドによって     
 広められた。最近ではラジオの伝道番組の宣教師、聖書
 根本主義者の牧師およびペンテコステ派の牧師、ジェ
 リー・ファルウェルやジャック・ヴアン・インプやジョ         
 ンへイジーなどTVで有名な指導者たちが、天啓史観    
        の伝道者である。

  ハル・リンゼイの『大いなる惑星地球の最後』
 (一九七〇年、邦訳『今は亡き大いなる地球」核戦争を熱望する人々の
   聖典』越智道雄監訳、徳問書店刊、一九九〇年)は、ダービーの
   教説の大衆版で、七〇年代にはノンフィクション部門の
   ベストセラーになった。今では、一九九五年に出たティ
   ム・ラエイとジエリー・ジェンキンズによる『レフトビハインド』シリーズが第一巻で
            五〇〇〇万部売れ、第一〇巻
   は、昨年夏ニューヨークタイムズ紙のベストセラー・ラ
   ンキングのトップの座を数週間維持している。

      イスラエルとの特別の関係


    冷戦時代、リンゼイらは、ソ連を攻撃するのに、北部
   の王国コグの崩壊を予言Lたエゼキエル書の一節を、ゴ
   グをソ連と解釈して引用した。今日の大衆向け説教家た
   ちは、中東と、彼ら独自の「悪の枢軸」である国連その
   他の国際機構、すなわち国際的なメディア企業複合体、
  多国籍企業、通商同盟、金融機関などにより指導される
  新世界秩序の興隆に焦点を当てている。これら相互に連
  動するシステムが、反キリストの予言する独裁のために
   基盤を整えつつあるのだと、彼らは説く。
 

   中東に関しては、彼らは、一九四八年のイスラエル建
   国、一九六七年のエルサレム旧市内奪還を、終末の重要
   な兆しと見ている。ヨルダン川西岸地域とガザ地区への
  ユダヤ人入植も、将来イスラム教徒の聖所にエルサレム
 神殿が再建立されることも、開示されつつある神の計画       
 の一段階なのだ。    
               
  リクードをはじめ、今日のイスラエルの最強硬派およ         、
 ぴ膨張主義グループは、この断固たる支援を大いに歓迎     
  している。ネタニヤフも、一九九八年に首相として訪米
 した際、最初に会ったのはジェリー・ファルウェルで、
  クリントンは二の次だった(原注−天啓史観論者の教理では、        、
 ユダヤ人が反キリストによって大々的に殺戮されること、彼らの
  生き残りがキリスト教に改宗することも予告されているが、今日
  の大衆向け宣教師の大半はこの点はつとめて目立たないようにし
  ている

このようなな信念にもとづいて,天啓史観論者は、エ″  
 ルサレムの共同統治という提案は一切認めない。ヘイジー
 が『エルサレムの最後の夜明け』(トーマス‥ネルソン社刊、
 一九九八年)で書いているところによれば、「キリスト教
 徒およびユダヤ教徒よ、この問題では分かち難く団結す
 ることにしよう。エルサレム市に関しては、今も、今後
 いつまでも、妥協はありえないのだから。我々は、世の
 終りに向って競走している。そして、イスラエルは台風
 の目の中にあるのだ……イスラエルは、神の至高のカに
 ょって作られた唯一の国であり、神はその聖性にかけて
 彼の聖都エルサレムを保護すると誓ったのである。神が
 イスラエルを作りたまい、保護しようとなされているの
 であれば、イスラエルと戦う国は神と戦うことになるの
  である」。

   天啓史観主義者は、また、ヨルダン川西岸やガザ地区
  のユダヤ人入植地のいかなる縮小にも反対している。と
  いうのも、これらの地区が、創世記第一五章第一八節に
  よれば、神がアブラハムに賜った「エジプトの川」から
  ユーフラテス河にいたるまでの全ての土地の範囲に含ま
  れているからなのだ。

   このシナリオでは、イスラム世界は神に逆らって同盟
  を結んでいるのであり、最後の日には絶滅に直面するこ
  とになる。これは、キリスト教の終末諭の系譜の中では、
  実際きわめて古くからある見方である。中世の預言宣布
  者たちは、イスラムを、聖書の中でその運命を予告され
  ている悪魔的な勢力だと見ていた。獅子心王リチヤード
  汾「が一一九〇年の第三回十字軍を準備していたとき、
 有名な預言解釈家ヨアキム・デ・フローリスが、エルサ
  レムを占領しているサラデインは反キリストであり、リ
  チヤードは彼を負かして、聖都を奪還するだろうと請け
  合った(ヨアキムの予言は外れた。リチヤードは一一九二年に
  ヨーロッパに帰ったが、サラデインはまだ王位にあった)。のち
  の予言看たちは、オスマン・トルコに反キリストの役を
  振ることになる。

      激しい反イスラム

  一九二〇年以後、オスマン帝国の崩壊とソ連の出現に
  ょり、このテーマは次第に消えていったのだが、二〇世
  紀末になって、預言宣布家たちが、イスラエルの最強硬
  派を支持したばかりか、イスラム教徒を度し難い悪であ
  り、打破されるべく運命つけられていると言うようにな
  ると、このテーマがにわかに再び勢いを得た。「アラブ
  世界は反キリスト世界である」と、ガイ・デエアリーは
  『来たるべき試練からの逃走』(一九七五年)で書いている。
  「神は、アラブ人たちの国土を破壊し、荒廃させると
  言っている」と、アーサー・ブルームフィールドは、一
  九七一年に出版し、一九九九年に再版を出した『最後の
  闘い、ハルマゲドンの前に』の中で書いている「これは、 、
  厳しい罰だと思えるかもしれないが、……契約は厳密に
  履行されるべきである。」

   この反イスラムのレトリックが今日、熱狂的流行を見
  ているのである。昨年六月、預言雑誌『ミッドナイト・
  コール』は、フランクリン・グラハム(ビリーの息子)によ
  る激しいイスラム攻撃を熱烈に支持し、グラハムの主張
  を「イスラム教は悪の宗教である」という明確な表現で
  要約している。リンゼイの一九九六年の予言小説『血の
  月』では、イスラエルは、アラブ過激派の計画的な核攻
 核兵器攻撃を開始する。要するに、ジエノサイドが、予
 言達成の究極の手段となるのだ。

 二〇世紀未の予言的著作家たちは、ジョージ・W・
 プッシュより早くから、サダム・フセインにも即座に照
 準をあてていた。フセイン自身は反キリストではないに
 せよ、反キリストの先触れには十分なりうると彼らは書
 いている。一九九一年の湾岸戦争のとき、「イエスを支
 持するユダヤ人」なる団体は、新聞の全面広告で、サダ
 ムは「聖書が警告している反キリストの精神を体現して
 いる」と言明した。

    パビロンのイメージ


 預言の信者たちは、一九七〇年代にサダムが打ち出し
 た、パビロンをその古き廃墟の上に再建するという壮大
 なプランに特に重要な意味を認めている。バグダッドの
南、ユーフラテス河沿いにある、旧世界の七不思議にも
数えられた伝説の都は、ネプカデネザル王によって、栄
光を実現した。紀元前紀五八六年にイスラエルに戦いをし
 かけ、エルサレムを破壊したのもこの王で、ダニエル書
 によれば、この不敬虔の故に発狂し、牛のように野原の
草をはみながら生涯を終えたという。

 黙示録の中では、バビロンは、およそ全ての腐敗を体
現するものとされている「大淫婦地の王たちは彼女       
と姦淫を行い」。これは、正義の都エルサレムに対立す
る存在とされ、黙示録では、火によって滅ぼされると予      
言されている。バピロンは、存在しなければ破壊されよ       
ぅがないので、サダムの野心的な公共事業計画は、予言       
成就のための重要不可欠な一段階と見傲されている。       
 チャールズ・ダイアーの『バビロンの興隆−−終末の      
兆候」は、このテーマを詳しく扱っている。   
   
サダムのバビロン再興のビジョンは、現代イスラエルの      
出現および欧州連合これが反キリストによる世界支配の先触      
れと解釈される)とともに、近づく世の終りを告げるもの    
であり、「聖書の預言の無謬性 の戦慄すべき証明だ」と、  
 「バビロンが最終的に破壊され                 
たとき、イスラエルはついに平和を得、安寧のうちにと
どまる」と、ダイアーは続けている。

 今日、このテーマは、サダム打倒の要求のうちに、強
烈に鳴り響いている。じつさい、ダイアーの本のカバー
には、サダムとネプカデネザルが並べて描いてあるのだ。
 ハル・リンゼイのウェプサイトには最近、米国旗とダ
ビデの星の旗をはためかせ、「サダム」に照準を定めた
ラベルのついたミサイルを積んだ軍用機の漫画があしら
われている。キャプションは「その日、私は、イスラエ
ルに攻めて来るすべての国々を探して滅ぼそう」という
  ゼカリア書の句が引用されている」

    これらのテーマはすべて『レフトビハインド』シリーズの
    小説に集約されている。神の計画が実現していくと、反
   キリストであるニコラエ・カルパティアは、国連事務総
   長になる(「私は五〇年間、国連に反対してきた」と、シリーズ共
   著者の一人で宗教的右派の老練な活動家でもあるティム・ラエイ
   は誇らしげに書いている)。カルパティアは国連をニュー
   ヨークから再建されたパビロンに移転させ、両都市の同
  時破壊のための準備を整える。両市は、天啓史観に従う
   なら、絶対悪を表し、神の預言的計画に挑戦するもので
   あり、国連は他の何者にもまして、反キリストによる悪
   魔的世界秩序を予示する機構だからだ。

     ブッシュの語る黙示録的語彙

   たしかに現在のプッシュ政権の政策の中には、預言信
奉者を戸惑わせるようなものもある。たとえば、九・一
一事件以後、連邦政府の監視権限が拡張されたことは
(皮肉にも宗教的右派の寵児、ジョン・アシユクロフト司法長官の
発案によるのだが)、反キリストによる世界的独裁に向け
てさらに一歩を進めるものだと思うむきもあろう。だが、
それと釣り合いをとって、政府の他の主要な諸方針 −
団際協力と国際協定に対する敵視、イスラエル・パレス
チナ紛争に優先的に取り組まないこと、パレスチナ領土
におけるユダヤ人入植地の増大に対して対応を控えてい
ること、およびサダム・フセインを重点的に攻撃するこ
となど − は、神の預言書的計画、人類史を黙示録的終
局へと進ませ、久しく待望されてきた正義と公正と平和
の時代を到来させる計画、と完璧に調和するものとして、
預言信奉者を感動させている。

 過去のみならず現在においても宗教的信念が米国の公
注意を向ける必要がある。何百万人もの米国市民が信奉
する預言書的シナリオに綿密に注意を払うことなしに、
現在の米国の政治的風土を十分には理解できない。
 指導者というのは戦争をするときは必ず神の加護を
祈ってきたものなので、その意味では、プッシュ政権も
たんにお馴染の慣習をひきついでいるにすぎない。

だが、我らの新生クリスチャンの大統領が、我が国の
外交政策の目標を「悪人たち」との全世界的闘争だと、
神学的用語で語るとき、また、最近彼が年頭一般教書の
中でサダム・フセインを、悪魔的で、「我々がかつて経
験したものとは一切異なるほどの恐怖の日」を到来させ
かねない、ほとんど超自然的な存在として描き出すとき、
彼は、まだ生々しい我々の九・一一の記憶を利用してい
るだけではない。何百万もの預言信奉者に強力な作用を
およぼす古くからの黙示録的語彙に訴えて、サダムばか
りでなく、我々の知る限りの人類史が終末に近づきつつ
あるという、明瞭で戦慄的なメッセージを伝えてもいる
のである。

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(コメント)
米国史家による良い論文です。現在のアメリカクリスチャンが、扇動的な
また、恣意的な牧師、教師により、「戦争へ引きずり込むため洗脳」
されていく様を描き出しています。

アメリカ、そしてそれに追従する日本のキリスト教会の
終末教理は、ユダヤの都合のよいように改ざん、編さんされています。
また、アメリカキリスト教会に潜り込んだ、「隠れユダヤ」の教師、牧師は、
自分達にとって、都合の良い教えをアメリカクリスチャン大衆に吹き込んでいます。

フランクリングラハム等、ユダヤくさいやからが、
自分達が憎むイスラム諸国をアメリカクリスチャンが憎み、攻撃させるべく、巧妙な論理で、
戦争をあおっているわけです。

また、自分達、ユダヤ、イスラエルがイスラム諸国に勝利することは、
神の勝利であり、神の経綸が進んでいるんだなどと聖書を片手に嘘を吹き込んでいるわけです。
しかし、これらのセム族にしては、色の白い人々は、黙示録のいう、
「ユダヤ人であると嘘をついている」悪魔礼拝者に過ぎません。
愚かで「目があっても見ない」人々のみ、このような嘘にまどわされていきます。
 

                                     

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